植田和男氏Photo:Bloomberg/gettyimages

厳しい時代の政策運営担う
日銀法改正後の第一世代

 岸田政権が、黒田東彦総裁の次の日本銀行総裁として経済学者の植田和男氏を起用し、国会に提示することが一斉に報じられたのに対し、国内外の金融関係者からは「サプライズ」との反応が示された。

 これまで有力候補として名前が挙がっていなかったためだろうが、筆者にはむしろ、「植田氏とは誰か?」というコメントがあったことの方が「サプライズ」だった。

 バブル崩壊後の金融危機などの後遺症が残る日本経済がかつてない厳しい局面だったときに、植田氏は日本を代表するマクロ経済学者として、また、日銀法改正後の審議委員の第一世代として、金融政策の運営に携わった専門家として金融関係者であれば誰でも知っている存在だ。

 異次元緩和からの正常化という新たな難しい課題を抱える日銀のかじ取り役には適任だ。

最初の量的緩和を理論付け
金利と資金供給量の関係を整理

 植田氏は、1998年から2005年まで日銀政策委員会審議委員を務めたが、筆者は00年の冬から03年の初夏まで植田氏の専属スタッフを務めた。

 そのときに印象的だったのは、01年3月に日銀が世界初の「量的緩和」策を導入した際の理論的な裏付けだ。