半導体産業に10兆円投資
「二つの国策プロジェクト」が始動!

 向こう10年で半導体産業に10兆円を投資する――。危機感をあらわにした日本政府と経済産業省は、なりふり構わぬ大胆策に打って出ている。

 まずは、海外企業から大幅に出遅れた「ロジック半導体(高度な計算や情報処理を行う。電子機器の頭脳の役割を担う)」については、二つの国策プロジェクトが動き始めた。台湾積体電路製造(TSMC)量産工場の国内誘致と国策半導体会社ラピダスの設立がそうだ。

図表:半導体の「製品別市場の推移 ロジック“テコ入れ”の次は「パワーとメモリー」
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 きっかけは、米国のバイデン政権が描いた半導体の国際連携構想にある。将来の飯の種となる技術覇権と国家の安全保障を担保する軍事覇権。米中の二大大国はすでに、その両方の覇権を握るための「最重要物資」として、半導体をロックオンしている。

 特にここ1年の米国は、中国への敵意をむき出しにしてきた。対中輸出規制の強化がその典型で、中国半導体産業の息の根を全力で止めようとしているのだ。

 その米国が繰り出す“最強カード”こそ、米国主導の国際連携だと言えるかもしれない。中国を排除した半導体サプライチェーンを構築する枠組み「チップ4」には、米国、日本、韓国、台湾が参加。ここに、華々しく四カ国連合が結成されることになった。

 もっとも、この連合結成に至るまでの事情は複雑だ。四カ国それぞれの思惑が交錯する「呉越同舟」連合なのだ。

 例えば、韓国の半導体ビジネスの最大の顧客は中国である。韓国は米国の手前、チップ4に参加する以外に選択肢はないが、中国ビジネスを維持するためには、米中双方とも等距離で付き合う綱渡りの外交を強いられているのだ。

 台湾は米国陣営にくみすることに異論はないはずだ。ただし本音では自国だけに最先端の量産技術を囲い込みたい。台湾有事などの緊急事態を想定すると、日米欧へ進出し生産の分散化を図ることが得策だと判断しているようだ。

「半導体敗戦」の歴史を紡いできた日本はどうか。米国は、この国際連携の最重要パートナーとして日本を据えているようだ。世界一の座から陥落した日本の半導体産業が一転、国際連携の鍵を握る主役に躍り出ることができたのは、前述したように各国の事情が複雑化していることがある。そうした特殊事情が重なったからこそ、競争力が凋落した日本でも、半導体戦線の「最終レース」にギリギリ間に合った。

 こうして、日本はまず、海外企業から大幅に出遅れたロジック半導体について二つの国策プロジェクトを立ち上げた。

 次のテコ入れの焦点は、日本企業が強いパワー半導体の再編と、キオクシアホールディングスの提携先探しが主軸のメモリー再編になりそうだ。