半導体 最後の賭け#2Photo:123RF

日本勢の復権に向けた「国策半導体プロジェクト」が本格始動した。台湾積体電路製造(TSMC)の日本進出に続き、世界最先端の半導体の国産化を目指す新会社ラピダスが発足。米中対立が激化する狭間で、出遅れ感のあった日本の半導体政策は一転、国際社会が注目するほどの勢いで“逆襲”を始めている。一体何が起こっているのか。特集『半導体 最後の賭け』の#2では、国策半導体の舞台裏で暗躍した政治家、官僚、学界、産業界ら「日米台のキーマン30人リスト」を全公開する。(ダイヤモンド編集部 村井令ニ)

ラピダス発足とTSMC誘致
国内の拠点は経済安保の要

 1月5日、米首都ワシントンで開かれた、西村康稔経済産業相とレモンド米商務長官の日米閣僚会談。

 対中国を念頭に置いた経済安全保障がテーマになった日米会談に同席していたのが、日本の国策半導体会社ラピダス社長に就任した小池淳義氏と、米IBM上席副社長のダリオ・ギル氏。IBMの技術供与で発足したラピダスが、日米連携の国策案件であることを象徴する場面である。

 政府が日本の半導体産業の復権に向けて掲げた「国家プロジェクト」として、ラピダス設立は、台湾積体電路製造(TSMC)工場の国内誘致に続く二つ目の柱となった。いずれも産業振興のみらならず、先端半導体の生産拠点を国内に立地することを狙いとしており、経済安全保障の要と位置付けられたことで実現した。

 実は、TSMC誘致の交渉とラピダスの構想が水面下で動き始めたのは、ともに2019年のことだ。

 TSMC誘致は、19年頃に米国トランプ政権が中国に対する強硬姿勢を強めたことが引き金となった。「半導体の安定確保」に懸念を強めた経済産業省が台湾側に誘致を打診したのだ。

 19年夏には、後にラピダス会長になる東哲郎氏(半導体製造装置大手の東京エレクトロン出身)が、米IBM幹部から電話を受け、世界最先端の回路線幅2ナノメートル(ナノは10億分の1)半導体の「日本での量産化」を検討するよう依頼を受けている。

 日台連携と日米連携――。この二つのプロジェクトが水面下で同時進行し、経産省が主導する「国家半導体戦略」の柱になるまでの舞台裏を探ると、政治家、学界、産業界の“重鎮”たちがさまざまな思惑で関わり、それぞれが重要な役割を演じていたことが分かった。

 次ページでは、国策半導体プロジェクトが実現するまでに暗躍した「日米台のキーマン30人」を一挙に公開する。