ファンコミュニティー運営も
収益化手法の主流に

 Twitterのフォロワーが多いクリエイターの中には、「pixivFANBOX」のようなクリエイター支援のファンコミュニティを運営することで、収益化を図る人もいるのだという。

「100円、500円といった月額制のプランをいくつかサイト内に開設して、金額に応じた特典をファンに還元する形のコミュニティ運営を行うクリエイターは、増えていると思います。同じ漫画家で妻の加藤マユミは、先読みが読めるプランに入ってもらえるように、気になる『ヒキ(=漫画の終わりのコマ)』を作ったり、特定のプランに加入した人限定の漫画を別に描いたり、かなり努力して運営していますね」

 Twitterで読んだ漫画の続きを読むために、pixivFANBOXで気軽に入れるプランに加入する、といった流れができつつあるのだという。また、ファンコミュニティ運営では、特に漫画関連商品を扱う『とらのあな』の運営する「Fantia(=ファンティア)」の勢いがすさまじいそうだ。

「例えば、Twitterなどで普通のイラストを載せた上で、ファンティアで500円のプランに加入すれば『差分(=元のイラストとの細かな変化のこと)』のきわどいイラストを見れますよ、とするわけです。人気のあるクリエイターは、万単位の会員数を抱えていますので、手数料でいくらか引かれたとしても月に数百万円単位で稼げているのではないでしょうか」

 かつては好きな漫画を描くクリエイターを支援しようと考えても、作品を購入するしか方法がなかった。しかし、今では無料作品のダウンロードや毎月少額のプランに加入するだけで、クリエイター個人を直接支援することが可能な時代に突入している。

 クリエイター側も商業誌に自身の作品を掲載してもらうことができず、筆を折るしかないと諦めてしまった人も少なくなかったはずだ。ところが、Twitterなどにローコストで自分の作品を投稿することが可能となり、クリエイター自身が作風や執筆ペースに合わせてマネタイズを図れる環境となってきた。

 ところが、「全体として、『Twitter漫画』は飽和状態になりつつあるように感じる」と、横山氏は危機感を口にする。

「クリエイターから読者に直接、作品を届ける手段が豊富になったことで、クリエイターの生計の立て方は広がったように感じています。しかし、Twitter漫画自体は読者に飽きられつつあるとも感じています。Twitter漫画が難しくなった時に備える意味でも、自分が良いと思うものを作り続けていくことが大事だと考えています」

 実際、「YouTubeショート」や「TikTok」のショートムービーのような他のプラットフォームで、媒体に合うように漫画を動画に編集した作品も登場し始めている。

 クリエイターは今後も時代の変化に苦慮することになるだろう。だが、拡散性の高いプラットフォームに無料漫画を投稿することで、読者とクリエイターが互いに恩恵を享受する流れは、プラットフォームが変わろうとも、これから先もまだまだ続きそうだ。

横山了一氏

漫画家。北海道釧路市出身。2002年ヤングマガジンにて「熱血番長鬼瓦椿」でデビュー。主な作品に「戦国コミケ」「息子の俺への態度が基本的にヒドイので漫画にしてみました」「北のダンナと西のヨメ」など。Twitterアカウント:@yokoyama_banchoにて、定期的に漫画を投稿しており、現在は「家庭が崩壊した妻の逆襲」を連載中。