年間支出を最低でも
500万円まで抑えるべき

 今回の試算では、退職前の月間支出額を46万円、年間552万円とします。家電の買い替えが年間10万円発生する場合もあると書かれているので、年間支出は10万円を加えた562万円です。

 Sさんの支出は多い方ですが、相談文には「退職後は趣味の旅行や園芸などを楽しみたい」との記載があります。そのため、もし今すぐ仕事を辞めたとしても、支出が大幅に減少することはないかもしれません。むしろ増えることもあり得そうです。

 しかし、これまで高めの支出を維持できたのは、年間1500万円超(今月からは1300万円)の高収入があったからです。退職して無収入になれば、支出を見直すべきだと言わざるを得ません。どの項目を削ればよいかは後ほど回答するので、試算では目安となる金額を示していきます。

 まずは現在の年間支出である562万円から10%超削減し、年間500万円を目指しましょう。その後さらに50万円削減し、450万円まで抑えるのが理想です。

 本当はもっと節約してほしいところですが、Sさんは住宅ローンの返済が69歳まで続くのがネックです。毎月の返済額は15万8500円、管理費等が毎月2万2500円なので、月々の住宅費用は計18万1000円と高額です。

 年換算すると217万2000円になるため、生活費やペットの世話代、趣味の金額などを考慮すると、450万円未満に抑えるのは難しいかもしれません。

 そこで今回は、Sさんが今すぐ仕事を辞める場合に限り、段階的に節約すると想定します。年間支出額は、退職から4年後の56歳まで500万円、57歳以降は450万円とします。この前提で、公的年金の受給が始まる65歳までの家計収支を見ていきましょう。

 Sさんが退職後は働かないとすれば、その期間中の収入は0円です。一方、見込まれる支出は、52~56歳の4年間で2000万円(500万円×4年間)、57~65歳の8年間で3600万円(450万円×8年間)となり、合計で5600万円です。

※今回の試算では、試算対象の年齢になった誕生日から、次の誕生日までの期間を「1年」として計測しています。

 Sさんが現在保有する金融資産額は、現金やFX口座などを合わせて5180万円です。働かずに65歳まで過ごし、上記の5600万円を取り崩すと、口座は“赤字”になってしまいます。

 このままでは、息子さんの結婚祝い金を支払うことすら不可能です。いくら年金受給が始まるとはいえ、この水準では「今すぐ退職」という選択はかなり厳しいといえます。

 では次に、Sさんの目安である56歳で退職する場合を試算してみましょう。相談文に記載のある給与は額面なので、2023年度の収入は手取り70万円程度、ボーナスなし(年収840万円)になる見通しのようです。