日本には四季があります。四季をさらに六つに分けたものが「二十四節気」です。先人たちは二十四の季節を味わい楽しむことで、豊かな暮らしを育んできました。今、このような日本古来の生活様式が再評価されつつあります。季節の流れに合わせて生活し食を摂ることが、心と体の最高の養生法なのです。この二十四の各季節の過ごし方をていねいに紹介し、話題になっている本が『二十四節気に合わせ心と体を美しく整える』です。
同書のなかより今回は「春分」における養生法を紹介します。「春分」は昼と夜の長さが同じになる時期で、寒さが和らぎ、暖かい日が増えてきます。気温の上下が激しくなるのと同時に、感情の起伏も激しくなる時期です。「春分」を健やかに過ごすためには、感情のコントロールが重要になります。では、今日からすぐに始められる「春分」の過ごし方――何を心がけ、どのように行動し、何を食べれば良いかについてお教えしましょう。
「春分」とはどんな時期?
「春分」は、ようやく寒さを脱して暖かい日が多くなる時期で、現代の暦では3月21日頃にあたります。国民の祝日である「春分の日」には昼夜がほぼ同じ長さになります。
春分の日の前後3日を含めた7日間が、春のお彼岸です。先祖の霊を供養する仏事が行われますが、それ以外にも農事始神祭などが行われます。また、山桜や染井吉野など桜の花が咲き始める頃です。春の訪れを告げる春雷が発生し、こぶし・木蓮なども花を開き始めます。
「春分」の時期は感情のコントロールに注意
春分の時期は、感情の起伏が高まります。特に怒りの感情が強くなるとされています。怒りのパワーは、実はとても重要です。物事を動かすパワーの源が怒りであることも珍しくありません。しかし、怒りのパワーが強過ぎると、周囲の人が離れていってしまいます。みなぎる怒りをコントロールするには甘い食べ物が有効です。スイーツで顔もほころびますが、心も筋も緩んで怒りの感情も和らぐのです。
逆に怒りの感情が湧かず、やる気も出ない人は、酸味を持つレモンやイチゴなどが刺激になります。この季節は、まさに酸っぱい「青春」と言うべき時期です。活動した後のレモンのはちみつ漬けは、クエン酸の効果によりパワーをみなぎらせます。ビタミンCも一緒に摂れるので効果的です。また酸味は腸の動きも活発にするので、デトックスや浄化効果も期待できます。
ため息は悪い気を呼び込むので禁物です。デトックスのためには息を力強く吐き切ることがおすすめです。東を向いて、朝日を見て深呼吸しましょう。春分は陽の気がゼロからプラスに変わっていく時期です。明るい笑顔で朝日を見ましょう。すべてはプラスに変化していくはずです。過去は見ずに未来を見据えていきましょう。
「春分」の時期の体の整え方
体調を崩しやすい時期です。朝起きたときや歯磨きのときに、吐き気がしたり口に苦みを感じる。さらに、脇腹が硬くなったり、右の肋骨の下が硬くなって指が入らなくなったら、要注意のシグナルです。症状がひどいときは漢方薬がおすすめですが、軽いうちであれば緑黄色野菜を多めに食べるとよいでしょう。特に青い葉物は、消化を助け解毒、浄化してくれます。肝臓機能が疲れているのでアルコールは控えめに、良質のアミノ酸をたくさん摂りましょう。
扁桃腺が弱い人は腫れやすくなります。腫れをとるには、清熱作用のある菊の花や金銀花などの生薬が効き、きゅうりやレタスなど夏野菜も効果的です。
漢方薬では「小柴胡湯(しょうさいことう)」が有効です。特に脇腹がはって苦しい、食欲不振、微熱などの急性熱性病、肺炎、気管支炎、長引いている風邪などに効果的です。昔は「葛根湯医者」今は「小柴胡湯医者」と言われるように、ストレスの多い現代社会では、ほとんどの人に効果のある処方です。ただしインターフェロンをやっている方や、虚弱体質の人には向きません。
「春分」の時期に心と体を整える食べ物
シソは、辛味で温性なので、風邪を治したり、解毒、発汗、ストレスを発散させます。また、呼吸機能を強化して、胃腸を強め、解毒作用に優れます。漢方薬にもシソはよく用いられ、気分を明るくし風邪を予防する効能もあります。最近は抗アレルギー効果もあるとされます。
日本料理では、刺身の飾りとしてタンポポのような菊の花が付いています。菊花は微寒性で、腫物を治したり、目の疲れを取るので、これを食べない手はありません。抗菌作用もあり、咽喉の炎症やのぼせを取って風邪の予防になります。
椎茸は、平性で神経や筋によいので、春のストレス改善に最適です。アレルギー症状にも効果があります。きのこもビタミンDが含まれた健康食です。さらに血をきれいにして、血行も良くなるので、高血圧や美肌にも効果があります。
うどは、辛味・苦味を持ち温性なので、風邪による頭痛や鼻炎などを治します。うどの根は、関節痛や冷え・むくみの改善にも用いられ、デトックスにも有効です。
この1月から「大寒」「立春」「雨水」「啓蟄」「春分」の時期の養生法を『二十四節気に合わせ心と体を美しく整える』に基づいて紹介してきました。是非、みなさんの生活をより豊かに充実させるためにお役立てください。