「子どもには、少しでも体によいものを食べさせたい!」ですよね。
でも、ごはんは毎日のこと。なるべくシンプルで簡単に済ませたいものです。
この連載では、『医師が教える 子どもの食事 50の基本』の著者で、赤坂ファミリークリニックの院長であり、東京大学医学部附属病院の小児科医でもある伊藤明子先生が、最新の医学データをもとに「子どもが食べるべきもの、避けるべきもの」をご紹介します。
不確かなネット情報ではなく、医学データと膨大な臨床経験から、本当に子どもの体と脳によい食事がわかります。毎日の食卓にすぐに取り入れられるヒントが満載です。
※食物アレルギーのある方は必ず医師に相談してください。
花粉症に効果的な食べ物なんてあるの?
花粉症はアレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎のこと。スギやヒノキなどの空中に飛散している花粉が原因で、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ・涙目・集中力の低下といった諸症状をもたらすアレルギー疾患です。
みなさんご存じのとおり、日本では花粉症は大人だけでなく子どもの患者さんも年々増加しています。つらい症状に悩む人が多く、毎年春の訪れとともに憂うつな気分になる人も少なくないでしょう。
そこでぜひ試してほしいのが、ヨーグルト+すりゴマの組み合わせ。これを毎日食べることで、花粉症の症状が明らかに改善することがわかりました。
どうして「ヨーグルト+すりごま」がいいの?
ヨーグルトとすりゴマがいい理由は、それぞれが腸内環境を整えてくれる食品だからです。「花粉症と腸内環境って関係があるの?」と思うかもしれませんね。じつは、口から入った病原体などを撃退するために、腸にはたくさんの免疫細胞があります。そして、花粉症などのアレルギー疾患は、免疫が正常に働いていないことが原因。だから腸内環境を整えて免疫細胞が正常に働くようにすることが、アレルギーを抑えることにつながるのです。
腸内環境を改善するには、善玉菌と善玉菌のエサとなる食物繊維を一緒に食べることが必要不可欠。ヨーグルトは善玉菌が豊富、すりゴマは食物繊維が多く含まれるということで、ベストな組み合わせなのです。
またゴマの成分セサミンは、抗アレルギー物質で、花粉症の症状を和らげる効果も期待できます。実のままのゴマは皮が固いので消化されづらく、そのまま体外に排出されてしまうことも。黒でも白でもいいので、すりゴマがおすすめです。
ヨーグルト100gにすりゴマ大さじ1杯が目安です。
日本人を対象とした研究で成果が出ています
2020年の春に日本人を対象に、私が行った研究をご紹介しましょう。2020年末には論文として発表しています[*64]。
次の内容で調査を行いました。
●普段の食事に「ヨーグルト」を4週間足した人 = 15人
●普段の食事に「ヨーグルトとすりゴマ」を4週間足した人 = 15人
●普段どおりの食事の人 = 15人
以上の3グループに分かれて実施。調査前後の身長体重測定、血液検査、腸内フローラ検査、アレルギー症状質問票から変化を調べました。
「ヨーグルトとすりゴマ」を4週間摂取したグループは、①目のかゆみ ②なみだ目 ③水っぱな ④くしゃみ ⑤鼻づまり ⑥勉強・仕事・家事の支障 ⑦精神集中の不良 ⑧思考力の低下(考えがまとまらない) ⑨倦怠感の合計9つの項目において有意に改善しました。
目・鼻の症状の合計(P=0.0004)、生活の支障の合計(P=0.002)、症状・生活・全般の総合計(P=0.001)でも有意な改善が見られました。
このかっこ内の数値が0.05以下の項目は、「統計学的に有意」な改善です。つまり、偶然、たまたまの結果ではなく、統計学的な解析をして、変化があったといえる違いだった、ということです。ぜひ試してみてくださいね。
このほかにも『医師が教える 子どもの食事 50の基本』では、子どもの脳と体に最高の食べ方、最悪の食べ方をわかりやすく紹介しています。
(本原稿は伊藤明子著『医師が教える 子どもの食事 50の基本』から一部抜粋・編集したものです)
小児科医、公衆衛生の専門医
赤坂ファミリークリニック院長。東京大学医学部附属病院小児科医。
東京大学大学院医学系研究科公衆衛生学/健康医療政策学教室客員研究員。
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。
東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。