民主労総の失地回復を
いかに阻止するか

 過激労組の民主労総は、貨物連帯のストの失敗と北朝鮮のスパイ疑惑で大きな痛手を受けている。

 民主労総傘下の貨物連帯は、運転手に運送料を保障する「安全運賃制」の恒久化と運用拡大を求めてストを行ったが、これに対して韓国政府は厳しい姿勢で対応した。韓国政府は昨年11月29日、セメント分野の輸送拒否者に業務開始命令を出し、「復帰義務を履行しない場合、法と原則に基づき厳正に対応する」と警告した。

 貨物連帯は当初、韓国政府が提示した「安全運賃制の3年延長」という妥協案の受け入れも拒否をしたが、最後は挫折した。

 貨物連帯は12月9日、11月24日以来16日間続けてきた集団輸送拒否(スト)を組合員の投票によって終了した。

 強硬姿勢を取り続けた民主労総傘下の労組が政府に屈服したのは初めてのことであり、その影響力の低下は顕著であった。

 また、韓国政府は北朝鮮のスパイ取り締まりとの関連で民主労総に圧力をかけている。スパイ防止当局は民主労総の元・現幹部4人の自宅と勤務地のソウル貞洞(チョンドン)にある民主労総本部事務室と、京畿道水原(スウォン)、光州(クァンジュ)、全南(チョンナム)、済州(チェジュ)など全国10カ所ほどの事務室と住居、車両などの家宅捜索を行った。

 民主労総幹部らは2016年から19年まで、海外で朝鮮労働党直属の対韓国スパイ工作機構である文化交流局の工作員の指令を受けた後、民主労総傘下の労働組合と地域本部に下部秘密組織を構築した疑い(国家保安法違反)を受けている。

 韓国保守の論客・月刊朝鮮の元編集長、趙甲済(チョ・ガプチェ)によれば、民主労総は、昨年8月13日、韓国労働組合総連盟(韓国労総)、北朝鮮の朝鮮職業総連盟(職盟)が共同で開催した「8.15全国労働者大会(南北労働者決議大会)」で、米軍撤収、米韓同盟解体などを主張、連帯書と共同決議文を作成、朗読し、従北主義論議を提起した。しかもその共同決議文は、日付表記などが北朝鮮方式になっており、北朝鮮側が作成を指導したものとみられるという。

 民主労総に対する政府の取り締まりが強化される中、民主労総は3月25日、ソウルの繁華街で「尹錫悦審判!闘争宣言大会」を開催した。1万5000人の組合員が参加し、行進も行った。その後、民主党などと日韓首脳会談を批判する集会を行った。

 これに対し警察庁は「集会・行進の過程で、申告した範囲を逸脱し、すべての歩道を占拠したり、長時間の交通渋滞を誘発したりすれば、法と原則に基づき迅速に解散手続きに入る」としていた。

 しかし、報道を点検する限り、大規模な衝突に発展した様子はない。これまでのように民主労総の過激な行動を許すのではなく、社会に「害毒」を流さない範囲にしていくことが、韓国社会の安定のために不可欠であり、民主労総の独走や影響力の復活を抑えることになるだろう。