反スパイ法だけではない
中国の法運用リスク

 中国という国を考えれば、幾多ものリスクが存在する。

 例えば、国家安全法や国家情報法、国防動員法だ。

 特に、国防動員法は中国政府が有事と判断すれば、中国に進出している日本企業も含めて、中国のあらゆる組織の人的資本や金、アセットの徴用が合法化され、戦時統制下におかれることが可能となってしまう。この有事の定義はやはり曖昧であり、台湾有事に限らず、南シナ海で偶発的な衝突が起きた際に、中国が“有事”と判断すれば、国防動員法が適用される。

 また、先述の複合機問題や合弁会社による技術流出リスクなどの中国による半強制的な技術移転、さらに視座を高くすれば、反外国制裁法などがあり、いずれも中国政府による恣意的な運用が懸念されるものばかりである。

 先述したように、中国で活動をするならば、 “中国の実態”を深く理解した上で、中国のリスクを深く・正しく捉えた対応が強く求められる。少なくとも、これらリスクを許容した上で中国と付き合うべきである。

 最後に、拘束された男性の適切な処遇と身の安全を心から祈る。

(日本カウンターインテリジェンス協会代表理事、元警視庁公安部外事課警部補 稲村 悠)