二日酔いの女性のイメージ写真はイメージです Photo:PIXTA

目が覚めてすぐに気づく倦怠感に、昨夜の深酒を後悔する。それでも、つい同じ日々を繰り返してしまう――。こんな無類の酒好きは多いだろうが、そもそも現代の医学では二日酔いのメカニズムは明かされていないのだとか。二日酔いにまつわる最新研究について、酒ジャーナリストの葉石かおり氏が医師たちに酒と健康について聞いた『名医が教える飲酒の科学 一生健康で飲むための必修講義』(日経BP)より一部抜粋・編集してお送りする。

二日酔いのメカニズムは
驚くほど分かっていない

 酒飲みならほぼ誰もが経験し、二度と経験したくないと思うのが「二日酔い」である。

 この二日酔いは、飲み過ぎによって起こるのは間違いないのだが、そのメカニズムはまだ謎に包まれたままだ。

 実際、私が周囲の酒好きの人に聞いてみても、二日酔いの原因を正確に把握できていないことのほうが多い。その日の体調、空腹の度合い、アルコールの飲み合わせ、チェイサーの有無、蒸留酒または醸造酒などの種類によって、二日酔いになったりならなかったりする。私自身も、先週は同じ量を飲んでもびくともしなかったのに、今週は翌日使い物にならない、なんてこともある。

 アルコールと健康についての研究で日本を代表する、久里浜医療センターの院長・樋口進さんは、「二日酔いの原因、それにメカニズムは、驚くほど分かっていない」と言う。

 例えば、アルコールを分解するプロセスの途中で生じるアセトアルデヒドが二日酔いの原因ではないか、という見方がある。アセトアルデヒドは人体にとって有害で、顔が赤くなったり、吐き気がしたり、動悸がしたり、眠くなったりするフラッシング反応を引き起こす。これらは、二日酔いの症状にも共通しているからだ。

 しかし、樋口さんは、「二日酔いの方を検査しても、血中からアセトアルデヒドが検出されることは、ほぼゼロです」と話す。

 樋口さんによると、お酒を飲んでも顔が赤くならない人、つまりアルコール耐性の強い人がお酒を飲んでいる最中に検査しても、アセトアルデヒドはほぼ検出されないそうだ。これは体内でアセトアルデヒドが早々に分解されてしまうからだと考えられる。

 そして、お酒を飲んで顔が赤くなる人の場合でも、「アセトアルデヒドが検出されるのは初期の段階だけ。時間がたつにつれ、アセトアルデヒドは検出されなくなります。こうしたことからも、二日酔いの直接の原因は、アセトアルデヒドではないと考えられます」(樋口さん)

 ただし、お酒を飲んで赤くなる人は二日酔いになりやすい、という研究報告がある。このため、「もしかするとアセトアルデヒドそのものではなく、その『後遺症』が二日酔いに関係している可能性もあります」と樋口さんは言う。