ちなみに、バー経営をしていた知人は、結局この「プチ・アルコール離脱症状」の繰り返しでアルコール依存症になってしまった。「ただの二日酔い」と甘く見てはいけない。

 ただし、樋口さんによると、脳波検査の結果を見ると、離脱時期と二日酔い時で正反対のパターンを示すことから、この解釈について異議を唱えている研究者もいるのだという。

ホルモンの変化が
脱水や低血糖を助長する

 二日酔いのメカニズムの候補としては、ほかにも、ホルモン異常・脱水・低血糖、酸性・アルカリ性のアンバランスや、炎症反応など、普段あまり耳にしない言葉が並ぶ。

 樋口さんによると、酒に酔った状態から二日酔いの状態になっていく間に、分泌状態が大きく変わるホルモンがある。具体的には、尿量を下げる抗利尿ホルモン、尿の排泄や血圧の調整に関係するアルドステロン、レニンなどだ。これらの分泌状態が変わることで、脱水や低血糖といった二日酔いの症状が引き起こされる可能性がある。

「アルコールは、抗利尿ホルモンを抑制します。そのため、みなさん実感されているように、お酒を飲むと尿が増え、トイレが近くなります。尿の量が増えると、体は脱水状態となり、二日酔い特有の口の渇きや、吐き気、倦怠感、頭痛などが起こると考えられています」(樋口さん)

 血糖値を下げるホルモンであるインスリン、そして血糖値を上げるホルモンであるグルカゴンの分泌も変化し、低血糖状態につながる。低血糖による典型的な症状は、体がだるくなって無気力になったり、気持ち悪くなったり、冷や汗が出たり、頭痛を起こしたりすることなどだ。これらも二日酔いによく見られるものだ。

 また、二日酔いになると、体の酸性・アルカリ性のバランス(酸塩基平衡)が酸性に傾いてしまう。これにより、疲労感が強まるのだという。このほか、二日酔い状態では炎症反応のマーカーが高値になることも知られており、これが二日酔いの際に消炎鎮痛剤がある程度の効果があることの根拠になっているのだそうだ。