無駄な研修をなくして、経営層と意思統一する
コロナ禍で進んだオンライン化、研修内容の多様化――いま、研修のあり方そのものが見直されるべき時期にある。研修は、受講者のキャリアアップとともに、企業のビジョンや組織の目標を達成するためにあり、その企画や実施においては、現場サイドと経営層の意思がかけ離れないようにすることが重要だ。
永田 「『研修を実施したら、会社はいくら儲かるんだ?』と経営者から言われる」という話を企業の人事担当者から聞くこともありますが、研修の実施が、儲けに直結することはありません。企業の利益は、市場の状況、競合の状況を踏まえて、何を、誰に、どのように売るのかという戦略が生むものです。そして、経営戦略を実行するのが「人」です。つまり、どんなに立派な戦略を作っても人が適切に動かなければ失敗に終わってしまう。その「人」の「行動変化」を促す手段のひとつが研修なのです。このことを企業の経営者も理解することが大切だと私は思います。
経営層が「いま、この研修をやるべきでは?」と、投げかけることもあるでしょう。そうした場合、人事部などの研修担当者は、ただの使い走りにならず、「なぜ、その研修を必要としているのだろう?」と、経営層の発言の背景を考えるとよいでしょう。そうすることで、組織の課題も見えてくるし、担当者自身のモチベーションも上がるのではないでしょうか。迷ったときは、きちんとトップと話し合うことです。トップがどういう経営をしていきたいのか、会社をどうしていきたいのかを把握していないと、意味のない研修を乱発することになってしまいます。
また、研修が増えれば、人事担当者の負担も大きくなっていくので、経営戦略と照らし合わせて、意味のない研修は減らしていくべきです。「○○さんがせっかくつくった研修だからやめられない」というような、慣習的に残っている研修もあるようなので、何年かに一回は「棚卸し」をしたほうがいいですね。一人で解決せずに、経営者や管理職と密に相談し、コンセンサスをとっていきましょう。
昨今では、就職活動時に研修の時間と内容をチェックする学生も増えています。人に投資している会社かどうかを判断するためです。人手不足のこの時代、良い人材を集め、離職を防ぐために、研修の企画と実施は熟考していく必要があります。
リーダーとなる人材を育成することも、多くの企業の課題になっている。永田さんが講師を務める立教大学経営学研究科リーダーシップ開発コースは、「次世代のリーダーシップ開発」を企業・組織で推進することのできる高度専門人材を育成するというものだ。2年間の大学院教育のなかで、多様な同級生と切磋琢磨し、プロジェクト型の課題解決を行っていく。
永田 現在、私は、金曜日の夜の授業を担当し、部下指導や管理者コーチングのための「マネジリアル・コーチング論」を教えています。チームごとに違う論文を読み、内容を解説し合うなど、ワークショップ中心の授業を行(おこな)っているのですが、学生たちがとても優秀で、学ぶ意識が高いことに驚いています。学生同士の自主的な学び合いもあり、私自身も学生の立場として授業に参加したいくらいです。