研修後のアンケートで受講者に尋ねるべきこと
研修を通して人材育成していくうえで、研修内容の「質」はとても重要だ。新入社員のマナー研修などは、研修会社が異なっても同じ内容のように思えるが、人事部の研修担当者はどういう視点で外部の研修会社や講師を選べばよいのだろう?
永田 ビジネスマナーは、一度の研修では学びきれないでしょう。講師の手本や動画などを繰り返し見て、実践して覚えていきます。そのためには、良質なロールプレイ、たとえば、役者を使って本格的なロールプレイを見せられる会社を選ぶとよいと思います。新人は、「(研修で)自分たちにお金を使ってくれている」とわかり、会社からしっかりサポートされていると感じます。
また、新入社員研修*2 は、現場で実践してみてどうだったかを振り返る「フォロー研修」の実施も、研修会社を選ぶうえでの条件になるでしょう。「内定期間を有効に使う」ことも研修の良し悪しにつながりますね。内定期間中にビジネスマナーに関するテキストなどを配布しておき、知識を得たうえで研修を行う。そうすることで、「わかる」から「できる」への移行がスムーズになります。そのために、研修会社が良質なテキストを持っているかどうかも、研修会社選びの基準になります。
*2 HRオンライン 別企業の新入社員たちが、ひとつの研修で一緒に学ぶことの価値 参照
企業によっては、「費用の安い研修会社」を選ぶこともあるかもしれませんが、安いところは講師の質もそれなりになります。前年踏襲で同じ研修会社に頼る企業も多いようですが、毎年必ず見直して、研修内容をアップデートしていくことが大切です。
どんなに良質な研修会社を選んでも、優れた研修を内製しても、研修は現場に「転移」しなければ意味がない。そのためには、「研修評価」についても見直す必要があると永田さんは語る。
永田 研修内容の良し悪しは、研修後の「アンケート」によって評価されることが一般的です。人事担当者や講師はその結果に一喜一憂するのではないでしょうか。ですが、「研修評価」は、経営と現場にインパクトをもたらしたかどうかという観点で捉えるべきだと思います。
私も携わっている『研修開発ラボ*3 』では、研修評価のために取得するデータの種類と、研修評価を行うタイミングを組み合わせる「混合評価」を提案しています。研修評価のデータを定量・定性問わずに混在させ、研修直後のアンケート調査に加えて、研修転移を測定するというものです。アンケートの「満足度」は、あくまでも主観であり、研修転移には結びつきません。それよりも、「この仕事は自分の仕事に役立つと思う」という「有用度」、「この研修で学んだことを、自分の仕事に活用できると思う」という「自己効力感」を聞いて、測定するほうがよいです。特に、自己効力感が高いほど、研修転移はしやすいと言われています。
*3 HRオンライン 研修の内製化に欠かせない『研修開発ラボ』とはいったい何か? 参照
具体的な方法としては、研修が終了した翌日に、リマインドメールを出すことです。(1)参加に対するお礼、(2)研修内容の復習、(3)現場実践の促進といった3点を明示し、3カ月後くらいにインタビューや簡易アンケートを実施して、研修が転移しているかどうかを把握します。