ホンダ、キヤノン、ソニーの明暗
米国式経営と日本式経営がもたらす違い

 ミンツバーグは、日本でも同様にアメリカ型マネジメントの弊害が出ていると指摘する。日本の全雇用者の40%が非正規であり、一般労働者とエクゼクティブの間の賃金格差は拡大している。

 そこで必要となるのが、会社組織をコミュニティとして育ててきた日本の組織文化だ。ミンツバーグは、今こそ日本人は日本の組織文化の本質に立ち返るべきだと主張する。

 かつてホンダ(本田技研工業)が、米国のモータサイクル市場で大成功を収めたとき、米国のボストンコンサルティングがその成功の秘密を分析した。彼らの分析では、本田宗一郎の類稀なるリーダーシップと緻密なマーケティングに基づく大胆な戦略が、功を奏したというものだった。

 しかし、その後この結果に不信を抱いた経営学者のリチャード・パスカルがホンダの幹部および社員の綿密なインタビューを行ったところ、全く違った結論を得た。ホンダは失敗ばかりしていたのだ。重要なのは失敗から学び、そこから得た経験知を共有し、また新たなチャレンジを行うという繰り返しが、ホンダを一流企業へと押し上げたという事実であった。ホンダの行ったことは「結果として」正しい戦略だっただけであり、その裏には何百という試行錯誤があったのだ。

 ボストンコンサルティングの分析は、リーダーシップ、戦略、分析が全てだという米国流経営ドグマの色眼鏡を通して行われたものに過ぎず、ホンダ躍進の本質を全く理解していないものだ。

 確かに本田宗一郎は稀有なリーダーであったが、彼は「利益を上げるリーダー」というよりは、「技術者集団としての組織を育て上げるリーダー」であった。ソニーにせよ松下電器産業(現パナソニック)にせよ、組織を大事にする文化は日本企業の特長だった。

 ミンツバーグ教授は、こう続けた。15年ほど前のソニーとキヤノンを比較すると面白い。ソニーは米国式経営手法を導入し、キヤノンは日本式経営に留まった。15年後の今、明暗ははっきりしているよね、と。