来日したミンツバーグ教授の
米国流マネジメント批判

 先週から来日している、カナダ・マギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授のワークショップおよびインタビューに参加する機会を得た。

 たぶん日本では過小評価されているが、ミンツバーグと言えば、北米ではマイケル・ポーターなどと並んで著名な経営学者である。

 ミンツバーグの経営論の最も特徴的な点は、戦略、分析、リーダーシップを偏重するマネジメントを批判し、「実践と学習」を重要視する点だ。現場で培われた経験と学習、職人的な実践知や直観などに重きを置き、いわゆるMBA的エグゼクティブが意思決定をトップダウンで遂行させるようなやり方を強く批判している。

 ゆえに、経営学の中では異端児扱いされることが多いが、その影響力は大きい。米国の経営学の教科書には、必ず彼の業績が紹介されていることからも、それがわかる。

 ミンツバーク教授と彼の義理の息子のフィル・レニール氏は「コーチングアワセルブス」というユニークなコンサルティングを行っている。日本では、ジェイ・フィール社が彼らと提携し、「リフレクションラウンドテーブル」という名前で、そのコンサルティングを行っている。私はそのためのテキスト翻訳の仕事をしていた縁もあり、教授の考えを直に知ることができた貴重な機会であった。

 その著作における舌鋒の鋭さとは裏腹に、実際に会ったミングバーグ教授は物静かな紳士で、丁寧に言葉を選んで物事を真摯に語ろうとする姿が印象的であった。

 約1週間の来日スケジュールの中で、彼は様々な公演やワークショップを行ったが、その中で一貫して述べていたのは、米国流のマネジメントが会社組織だけではなく、米国社会全体に対して深刻な悪影響を与えているという点と、それ故に会社組織をコミュニティとして育てなくてはならないという主張だ。