カンパニーごとにカルチャーが違うことで生じる壁

永田 1on1ミーティングについては、「こうするべき」という縛りを設けず、社員それぞれの主体性に任せているそうですね。最近、1on1ミーティングの実施回数が増えていると伺いました。

大野 そうですね。私は今年で入社5年目なのですが、入社当時は「1on1」という言葉そのものを知らない人もいるくらいでした。いまは、役員クラスが積極的に1on1ミーティングに取り組むようになり、それが全社的に広がってきています。上司と部下にしても、同僚同士にしても、1on1の文化はこの数年でかなり定着しました。

小向  弊社はもともと、上司と部下の間でもLINEでコミュニケーションをとるようなフラットな組織です。社長からLINEが来て、スタンプで返すこともあるくらい(笑)。そうしたカジュアルなコミュニケーションの一方で、これまでは面と向かって相手にフィードバックするような対話を避ける雰囲気があったように感じます。それが、最近は1on1ミーティングが定着してきて、多くの社員が「ビジネスの顔」で対話ができるようになりました。

永田 たとえば、事業部長が人材を探しているときにHRBPが他部署で埋もれた人材を推薦するような“会社全体の人材最適が理想”とのこと――御社はカンパニー制を採用していらっしゃいますが、カンパニー間の「壁」についてはいかがですか?

小向 事業部長が見る範囲はどうしても担当組織のみとなるため、HRBPが間に入って、広い視野でのタレントマネジメントをするのが理想です。ただ、いま現在、仕組みとしてそういうことができているかといえば、それぞれのカンパニーの色が強いこともあって、発展途上な状態です。たとえば、広告系のカンパニーの社員が金融系のカンパニーに異動すると、一から自分自身の価値観や仕事の姿勢を変える必要に迫られるかもしれません。まるで別会社に転職したように。そうしたことから生じるカンパニーの「壁」もあるでしょう。

大野 とはいえ、社内公募制もあるので、カンパニーを跨いで異動することはあります。その場合は、当人と異動先のカンパニーがコミュニケーションをしっかりとることが重要です。相手のカルチャーがまったく分からないまま、「この領域の仕事をしたい」という思いだけで異動した方には、HRBPから「この組織にはこういうカルチャーがあるから、こういうところに注意して」とか、「この組織なら、こういうかたちであなたの力を生かせるのではないか」など、客観的な意見を伝えるようにしています。

小向 カンパニーごとにカルチャーが違うというのは、HRBPにとってもなかなか大変なことです。担当するカンパニーが変わると、これまでと同じアドバイスが通用しなくなるので、新たにマインドセットする必要があるのです。弊社のHRBPには、一人ひとりの社員に合わせたアドバイスが求められます。