ジャニーズ性加害問題の根幹に「権力者への忖度」
こういう話を聞いて、勘のいい方はもうお気づきだろう。そう、今申し上げた構図は、今回のジャニーズ性加害報道にまるっきり当てはまるのだ。
週刊誌や雑誌で繰り返し報じられ、裁判にもなって、ネットやSNSでも語られていたジャニー氏の性加害を、なぜテレビや新聞が20年以上もノータッチだったかというと、シンプルにジャニーズ事務所が「大口の取引先」だからだ。
テレビはジャニーズのアイドルがいなければ歌番組もドラマもバラエティも成り立たない。また、ジャニーズのアイドルの皆さんは広告にも多数起用されていて、「広告ビジネス」が収益の多くを占めるテレビ・新聞が、広告を差し止めるようなことはできない。だから、忖度をし続けた。
しかし、今回の報道のきっかけとなった英BBCにはそういう発想はない。
日本のエンタメ界の功労者であっても、何十人もの未成年者を相手に性加害を加えていたら連続性犯罪者以外の何者でもない。だからBBCのドキュメンタリーは、日本のマスコミが好きな「闇」とか曖昧な言葉でぼやかすことなく、ジャニー氏をはっきりと「プレデター」(捕食者)と呼んでいるのだ。
つまり、今回のジャニーズ性加害問題と、TIME誌「軍事大国」問題は実は根っこの部分では「日本のマスコミの権力者への忖度」という同じ問題があるのだ。
さて、そこで次に皆さんが不思議に思うのは、なぜ日本のマスコミはこういう忖度スタイルが当たり前になってしまったのか、ということだろう。
安倍政権が悪い、反日左翼が悪い、中国・韓国が悪いなど、この手の話になると、我先に「犯人」を特定して断罪するのが今の風潮だが、個人的にはそういう類の話ではないと思っている。
なぜかというと、日本のジャーナリズムは、戦前から「権力と一体化することが正義」というかなり独特な思想があったからだ。