個人と組織と社会を幸せにしていくパラレルキャリア
シニア社員をはじめ、パラレルキャリアをこれから考える人は、まずは何らかの資格取得を目指すことが手っ取り早いようにも思えるが……。
中井 もちろん、資格の取得もありですが、資格は準備のひとつですので過度の期待は禁物です。資格を取得する際にも内にこもらずに、勉強会への参加や仲間と一緒に資格に挑戦してみるといった具合に、人との交流を取り込むといいですね。気をつけたいのは、趣味型のパラレルキャリアだと、所属している企業・組織への貢献につながりにくいということ。「キャリアをつくる」という目的においては、興味・関心があり、なおかつ、企業・組織や社会にとって何らかのメリットのあるパラレルキャリアが理想でしょう。本業で給料をもらっている以上、所属している企業・組織への貢献につなげようとする姿勢は大切だと、私は思います。
これからの時代、シニア社員の「キャリア自律」は、個人にとっても、企業にとっても、より不可欠なものになるにちがいない。個人の姿勢としては、役職定年といったキャリアの「崖」を落ちて定年を迎えるよりも、第2章のためにパラレルキャリアをつくることが肝要なのだ。
中井 人生の旬は人それぞれ。遅咲きの人もたくさんいるでしょう。だから、どんなときでも諦めずに学び続けることが肝心です。人生には努力していても成果が出ないことが多々あります。そんなとき、私は「花の咲かない寒い日は、下へ下へと根を伸ばせ」という言葉を自分に言い聞かせています。いつか芽がでると信じて、諦めずに地道に学び、行動し続けることが、望むキャリアの道につながる唯一の方法だとも考えています。
志を持って、しっかり準備すれば、シニアになってからのキャリアチェンジも可能です。シニア社員は自分の労働環境や社会変化に目を背けがちで、また、本業以外の活動に消極的だったりします。かつての雇用関係では、「滅私奉公」が美徳でしたから(いまは「活私奉公」の時代です!)。年功序列に従い、「これからは楽して給与が上がる!」と思っていた矢先に梯子を外されたと感じることもあるでしょう。しかし、そんなときも被害者意識を持たないことです。また、役職定年や定年は「見えている崖」なので準備する時間もあるし、崖を自己変容のきっかけとするという発想の転換があってもいいように思います。
一方、企業・組織側は、シニア社員を見放していないというメッセージを発信するべきでしょう。どんな社員でも、何歳になっても、企業・組織に貢献するチャンスはあるし、企業・組織はシニア社員のパラレルキャリアを後押しして、社内での活躍の場所を考える必要があります。シニアの活躍は社会的なメッセージになりますし、やがてシニアになる若手や中堅社員のモチベーション低下防止や離職防止にもなります。
企業と社会の双方が、若手や女性活躍を推進すると同様、シニア活躍推進に向けての具体策を本格的に展開していくべき時期にあると言えるでしょう。
シニア社員をはじめとしたビジネスパーソンのパラレルキャリアが、個人と組織を必ず元気にすると私は信じています。