親と子の同居に対する
筆者自身の価値観と偏見

 一般論を考える前に、筆者個人が現実にこの問題をどう考えているかについて述べておこう。

 筆者の息子は今年の春に東京の大学に進学することになった。家族は東京に居るので、家族の元から大学に通うことが可能だったが、大学の近くにワンルームマンションを借りて一人暮らしをさせることにした。費用的には少々不経済である。

 理由は、家族から引き離して「早く大人にしよう」と父親である筆者が考えたためだ。家族と同居している子供は、毎日親(特に母親)と話すので、ものの見方や価値観に対して親の影響を受けるし、生活面でもさまざまに親に依存する。この関係を早く断ち切ることが、息子の成長に有効だと考えたのだ。

 背景には、息子が将来十分経済的に自立して生活できるようになるだろうという息子個人への評価があったし、それ以上に、独立して暮らすことが自立心につながるという、筆者の年代が持ちがちな価値判断があったと思う。たぶん偏見が含まれているが、過去に多くの男性を観察していて、精神的に「母親離れ」ができていない人物の性格に残念な面を多く感じてきたということもある。

 偏見のついでに告白しておくと、娘(息子の2学年下)に対しても同じようにするかどうかは決めていない。

 子供の性差と子育てをどう考えるかは、難しい問題だ。「原則として、性別に関係なく本人の個性次第だ」と頭では考えているが、「女の子は、こうした方が生きやすい」という世間の環境に適応して、男の子と扱いを変える可能性はある。ジェンダー問題がご専門の方などからは大いに批判される態度かもしれない。私が政治家など公職にあれば、そもそもこの点について正直に述べることが難しかろう。幸い気楽な立場なので、正直に書いた。

 筆者自身が、核家族化が進行し「成人したら自立」が当たり前だった時代に育ち(筆者は昭和の真ん中、昭和33年生まれだ)、かつての男の子だった自分固有の経験に影響されていることは否めない。