専門的な対外情報機関がないため
脆弱な海外における情報収集活動

 公安調査庁は、オウム真理教などの破防法(破壊活動防止法)対象団体を中心とした対策や国内外の情報収集活動を行っているが、組織としては大きくない。

 そして、外務省は、国際情報統括官組織が国際情勢に関する情報の収集・分析、外国および国際機関に関する調査などを行っているものの、情報活動に特化したものではなく、その権限と手法にも限界がある(外務省には国際テロ情報収集ユニットがあるが、その内容は後述する)。

 海上保安庁は、警備救難部が情報収集を行っているが、専門組織ではない。

 内閣情報調査室(通称:内調)は、国内外の情報収集や衛星による画像情報を収集するなどしながら、日本の情報機関の取りまとめ役を担っているが、情報収集活動も限定的である。

 また、内調の人間に聞くところ、各省庁の横断的な情報連携はスムーズではなく、積極的な対外情報活動が脆弱であるという。

 このように、日本には専門的な対外情報機関が存在しないため、海外における情報収集活動が脆弱である。いわゆる米国CIAや英国MI6のような“本物”の対外情報機関のクオリティが望めないのが実情であり、日本において強力な情報機関が組織されるべきである。

日本においても
国際テロは無縁ではない

 さて、前述の外事4課では主に国際テロ対策を主とした任務としているが、実は日本は国際テロと無縁ではない。

 過去には、日本赤軍がテルアビブ・ロッド空港における無差別銃乱射事件(死者26人)や、日本航空機をハイジャックし機体を爆破したドバイ事件やハーグ事件、米国とスウェーデン大使館を襲撃・占拠し、館内にいた米国の総領事ら52人を人質に取ったクアラルンプール事件などを相次いで引き起こした。

 また、ISILによる邦人殺害事件(2015年)や、バングラデシュ首都ダッカで、武装集団がレストランを襲撃し、邦人7人を含む20人以上が死亡、邦人1人を含む多数が負傷した事件(2016年)などを例に、海外におけるテロ事件では、ほぼ毎年邦人が被害に遭っている。

 ちなみに、国内での国際テロ事件に目を向けると、千代田区内のビル前において時限式の爆発物が爆発した千代田区内同時爆弾事件(1988年)や、悪魔の詩翻訳者殺害事件(1991年)、1993年に発生したニューヨーク世界貿易センタービル爆破事件の主犯格とみられるラムジ・アハメド・ユセフらが、東京を経由する便を含む米国旅客機12機を同時に爆破する計画である「ボジンカ計画」を企てていたなど、日本は国際テロの現場でもある。

 そして、日本のテロ対策により未然に防がれているテロ事案があるのも事実である。