田中嘉一・日本カストディ銀行前社長の「不正行為」を認定した調査委員会は、刑事・民事上の責任をどのように評価したか。そのリストを公開する。一方、田中氏の証言により、現経営陣や筆頭株主の三井住友トラスト・ホールディングスにも説明責任が浮上した。特集『DX利権 日本カストディ銀行の悪事』(全5回)の最終回は、巨大資産管理銀行で悪事を働く、「本当に悪いやつ」を追及する。
調査委はCBJ前社長の刑事責任を認定
それらが全て“ぬれぎぬ”の可能性も
日本カストディ銀行(CBJ)の調査委員会が5月にまとめた報告書によれば、田中嘉一前社長が不正に関わったとされる案件は9件だ。
これまでに紹介したのは、CBJによる基幹システムの「NICE基盤」更改プロジェクトで業務委託したキンドリルジャパンに対し、田中氏がCBJ社長退任後にAITを通じてコンサルタントになろうとした「キンドリルAIT案件」(本特集#1『【内部資料入手】日本カストディ銀行の前社長に不正疑惑!巨大資産管理銀行をむしばむ「DX利権」の全貌』参照)。
日本アイ・ビー・エム(IBM)や野村総合研究所(NRI)に対し、田中氏の元部下が経営するITコンサルティング会社コーラルテックを通じて報酬を得ようとした「IBMアドバイス案件」と「NRIアドバイス案件」(本特集#2『IBM、野村総研…ITベンダーを利用して業務委託費を還流か、日本カストディ銀行の不正スキーム判明!』参照)。
そして田中氏がコーラルテック主催の研修で講師となり、CBJからコーラルテックを通じて報酬を得ようとした「外部研修案件」(本特集#3『住友組vsみずほ組の抗争勃発!日本カストディ銀行の不正に三井住友FGは「漁夫の利」を虎視眈々』参照)などだ。
調査委が調べた案件は他にもある。KDDIや、住友商事系のSCSKサービスウェアとの取引を巡る案件がそれだ。
次ページでは、調査対象となった全9件のリストと、調査委がそれぞれの法的責任をどう評価したかの結果を全て公開する。うち2件については「刑事責任あり」とし、CBJは捜査機関に相談している。
だが、田中氏がダイヤモンド編集部に語ったインタビュー(本特集#4『【独占・衝撃告発】疑惑渦中の日本カストディ銀行田中前社長「土屋社長が全て知っている」の真意は?田中嘉一・日本カストディ銀行前社長インタビュー』参照)によれば、それらが全て“ぬれぎぬ”である可能性も浮上した。次ページで「本当に悪いやつ」が誰かを解き明かす。