三井住友 名門「財閥」の野望#10Photo:JIJI

銀行統合に遅れること10年。2011年4月に、中央三井トラスト・ホールディングスと住友信託銀行が経営統合を果たした。特集『三井住友 名門「財閥」の野望』(全18回)の#10では、メガバンクの軍門に下ることを拒絶し、信託銀行同士で手を取り合って生き抜くことを決意してからの足跡を振り返る。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

世紀の銀行大合併から遅れること10年
メガ傘下入りを拒絶した三井住友信託が誕生

 帝国ホテルの「桜の間」――。その日も部屋の中央部分には、桜の花びらを模した壮麗なシャンデリアが浮かび、空間を彩っていた。

 門出の日にふさわしい記者会見の会場で、旧中央三井トラスト・ホールディングス(HD)の田辺和夫氏は断言した。「新しいグループは、メガバンクのグループに入るつもりは全くない」。旧住友信託銀行との経営統合を発表した、2009年11月6日のことだ。

 発表から1年半が経過した11年4月、新会社の三井住友トラスト・ホールディングスは始動する。財閥の垣根を越えた「世紀の大合併」により三井住友銀行が誕生してから、実に10年が経過していた。

 中央三井と住友の二つの信託銀行は、メガバンクではなく、同業同士で手を取り合う道を選んだ。専業信託として自らの経営基盤を強大化することで、同じ財閥の名を冠する三井住友銀行とも「より円滑で友好的な関係を構築できる」(常陰均・住友信託銀行社長)と考えたからだ。

 だが、並び立った二つの「三井住友」は協調などせず、むしろ激しくせめぎ合いながら現在に至る10年間を歩んでいる。