DX利権 日本カストディ銀行の悪事#3

日本カストディ銀行の田中嘉一前社長ら、不正疑惑のある幹部はいずれも旧住友信託銀行の出身者だ。銀行や生命保険ら有力金融機関が株主に名を連ねるCBJには、そんな「住友信託銀行組」にかねて不信の目を向ける者もいた。みずほフィナンシャルグループだ。そして行内抗争が勃発しかねない状況を、虎視眈々と見つめる者もいる。特集『DX利権 日本カストディ銀行の悪事』(全5回)の#3は、彼らの権謀術数を描く。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「みずほFG組が神経質になっている」
田中氏のメールで判明!CBJ内部の疑心暗鬼

 日本カストディ銀行(CBJ)の調査委員会がメスを入れた調査対象の一つに、外部研修案件がある。

 これは田中嘉一前社長が2022年12月31日に社長退任した後、CBJからITコンサルティング会社のコーラルテックに研修を委託し、その研修の講師を田中氏が務めて報酬を得ようとした案件である。

 23年1月に契約が解除されたため、結果的に研修は実施されなかったが、調査委の報告書で興味深いのは、不正疑惑とは違う理由でこの研修に異を唱えた者がいるという点だ。

 その理由とは、田中氏やコーラルテック社長の廣瀬哲也氏の出身である旧住友信託銀行の勢力に対する、他行出身者らの不信だ。

 三井住友トラスト・ホールディングス(TH)系の日本トラスティ・サービス信託銀行と、みずほフィナンシャルグループ(FG)系の資産管理サービス信託銀行が合併して20年7月に発足したCBJは、銀行や生命保険の出身者が集う“人種のるつぼ”だ。

 それは銀行合併の歴史で繰り返された、派閥抗争の舞台となり得る。実際、それがCBJ内部で起きていることが、報告書から読み取れる。

 次ページからそれを明らかにしていく。