楽天 解体の序章#2

楽天グループの携帯電話子会社、楽天モバイルで基地局建設の工事発注を巡って下請け業者を巻き込んだ大規模な不正が発覚した。この構図は、日本郵政との提携と引き換えに切り捨てた物流事業「楽天エクスプレス」で明らかになった金銭着服の不正と酷似する。楽天の内部で腐敗がまん延するのはなぜなのか。特集『楽天 解体の序章』(全6回)の#2では、楽天グループを覆う「不正連鎖」の闇に迫る。(ダイヤモンド編集部 村井令二)

中堅物流会社の経営破綻で発覚した
モバイル部門の不正請求は巨大化の可能性

 日本最大級の物流倉庫が立ち並ぶ千葉県流山市。巨大物流倉庫群「アルファリンク」の一角に、楽天グループの携帯電話子会社、楽天モバイルが基地局の資材を保管している「流山センター」という物流拠点がある。

 この倉庫では、楽天モバイルの発注に応じて、基地局工事に必要な資材をワンパッケージに梱包し、全国各地の基地局工事業者に配送する作業が行われていた。流山センターの運営は8月30日付で民事再生法の適用を申請した中堅物流会社の日本ロジステック(東京都千代田区)である。

 楽天モバイル側で日本ロジへの発注業務を担っていたのが、部長職にあった元従業員のA氏だった。しかし、この業務の裏でA氏は巨額の水増し請求により金銭を着服していたことが発覚。楽天モバイルはA氏を懲戒解雇して刑事告訴しており、楽天グループを揺るがす巨額不正に発展しようとしている。

 不正発覚のきっかけとなった日本ロジの再生手続きの関連資料によると、楽天モバイルが日本ロジからの不正請求で被った損害額は総額46億円。A氏と日本ロジ役員らの「共謀」により、2019年10月から22年3月にかけて水増し請求が繰り返されていたとしている。まさに20年4月に携帯電話サービスを開始した楽天モバイルが基地局建設を加速したさなかに、不正が行われていた。

 この不正取引に詳しい内部関係者は「日本ロジの経営破綻で表沙汰になった不正は氷山の一角」と証言する。楽天モバイルの基地局工事を巡って横領された金額は46億円をはるかに上回る規模になる可能性があるというのだ。

 ダイヤモンド編集部は、複数の関係者の証言を通じて、楽天モバイルの内部で行われていた「不正な金銭着服の構図」をひもといた。次ページでは、その全体像を明らかにする。同時に、楽天グループ内で不正連鎖の温床となった組織の問題点に迫る。