まさにコールド・リーディングの対象者と同じで、自分の信念と一致するものを記憶し、一致しないものは無視するのだ。誰もがこれをやっている。そう、あなたも。自分が問題なのだとは誰も気づかない。それこそが問題なのだ。
心理学者のニコラス・エプリーは、「人の第六感は瞬時に働き、後知恵で修正することはない」と言う。いったん誰かの人物像についてストーリーができてしまうと、それをアップデートするのは至難の業だ。このことが、第一印象の「諸刃の剣」に関する基本的な洞察をもたらす。
(中略)
では、確証バイアスに抵抗するにはどうすればいいだろう? それには三つの重要なステップがある。
1.説明責任を果たす
もし誰かに対する自分の見解が、相手の死刑につながるとしたら、あなたは速断を慎み、もっと徹底的に吟味するだろう。コンクリートが永久に固まって変更が利かなくなる前に、自分の判断が正確かどうか再確認しようとするはずだ。
心理学者のアリー・クルーグランスキーの研究によると、説明責任を果たすために自ら高いハードルを課せば、証拠を徹底的に見直すまで、私たちの判断の硬直化は避けられるという。このプロセスを楽しく行なう方法は、ゲームに見立てることだ。より正確さを期し、説明責任を果たす方向に自分を追い込もう。
2.判断する前に距離を取る
マリア・コニコヴァはその素晴らしい著書、『シャーロック・ホームズの思考術』(早川書房)のなかでニューヨーク大学の心理学教授、ヤコブ・トロープの調査を詳しく取りあげている。同研究では、心理的距離を取ることによって、より合理的で客観的な判断が可能になることが示されている。
「一歩下がって、より一般的な観点から状況を想像するように言われた成人は、より良い判断と評価ができ、自己評価もより高くなり、また、感情的な反応性が低くなる」
これこそが、初対面の人をより正確に評価し、第一印象で速断しようとする脳の衝動に抗うために必要なスキルなのだ。