なぜだろう? 私たちは、子どもは間違いをするものだと思っているが、悪人だとはなかなか信じられない。脳はそうした考えを、「過度の一般化」というバイアスにより、童顔の大人にも拡大適用するのだ。
しかし、本当に童顔の人間のほうが無邪気なのだろうか? そんなことはない。童顔の若い男性は、「幼少期・思春期に否定的な感情が多く見られ、加えて思春期には喧嘩っ早く、嘘をつくことが多く、青年期には自己主張や敵対心が強いなど、童顔から受ける印象と矛盾する傾向を示した」という。
第一印象のパラドックス
ところで、こうしたバイアスを意識的な努力で克服できると思ったら、それはおそらく間違いだ。私たちが認知バイアスに気づくのを妨害するバイアスが脳に備わっていることが、数多くの研究で示されている。
たとえバイアスのことを説明したり、注意したりしても(私のように)、人びとは、他人のそれには気づくようになるものの、自分自身は客観的だと確信している。さらにややこしいのは、なかには役に立つバイアスもあるということだ。バイアスが正確な限りにおいて、それを取り除けば予測の精度が落ちるという、論理的に予想される結果が、数々の研究で明らかにされている。あぁ、まったく。
私たちの脳は膨大な数の認知バイアスを抱えており、そのすべてに手っ取り早く対処する方法はない。しかし第一印象に関しては、闘うべき相手は主に「確証バイアス」である。私たちには、自分の信念と一致する情報ばかりを好んで探す傾向がある。諸説を検証するのではなく、自分がすでに持っている見方を強化するために情報を集めるのだ。
注意して観察すれば、他者(そして自分自身)がつねに微妙な確証バイアスに陥っていることに気づくだろう。持論を裏づける証拠にはすぐに飛びつく一方で、反証に必要な証拠についてはハードルを高くし、膨大な数を求める。
「四〇〇の研究が、私の見方を否定している? ではもっと探してみよう! 一つの研究が、私の意見が正しいとしている? どうやら答えが出たようだ」といった具合だ。