処理水巡る日中の出口なき対立で、中国には「二つの誤算」があった?東京電力福島第一原発の処理水海洋放出を受け、警備が強化された北京の日本大使館。中国政府は、日本の水産物輸入の全面的停止を発表するなど、処理水が外交問題化しつつある Photo:JIJI

 東京電力福島第一原発の「処理水」の海洋放出を巡って中国が激しく反発し、外交問題になりつつある。しかもより深刻なのは「出口がない」(日中問題の専門家)ことだ。

 日本政府が処理水の海洋放出に踏み切ったのは8月24日午後1時。中国政府は直ちに「断固とした反対と強烈な非難」との談話に加え、日本の水産物輸入を全面的に停止したと発表した。

 中国は日本政府が海洋放出を決定して以来、処理水を「核汚染水」と表現して、放出反対の方針を貫いてきた。その点では、中国の反発はある程度は想定された。

 しかし、「これほど強く出てくるとは思わなかった」(政府筋)というのが日本側の受け止めだった。農水相の野村哲郎も25日の記者会見で中国側の強硬措置に「驚きました」と述べていた。原発事故後に中国が発動した福島、東京など10都県を対象にした食品・農林水産物の輸入停止と同程度の措置を想定していたからだ。

 この中国の輸入停止措置に対して外相の林芳正は「科学的根拠に基づかない措置は全く受け入れられない。即時撤廃を(中国側に)申し入れた」と語り、強い抗議の姿勢を示した。ただ、この時点で日本政府と中国側と議論がかみ合うはずがなかった。向き合う土俵が違うからだ。

 しかし、日本政府は今も強気だ。「中国には二つの誤算があったのではないか」と日本政府関係者は指摘する。

 国際原子力機関(IAEA)が放出の“お墨付き”を与えた包括報告書と、隣国の韓国が放出に理解を示したことだという。