不安定な商品相場、サプライチェーンの目詰まり、景気対策の現金給付といったさまざまな要因が絡み合う中、インフレ率を2%未満に抑えようとしている中央銀行にとって、その「道しるべ」として本当に信頼しているのは労働市場のひっ迫度だけのようだ。残念ながらそれは「正確な方角を示すことがめったにないコンパス」に過ぎない。米国の8月の統計で雇用・賃金の減速と失業率の上昇が示されたため、金融市場は米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを続ける可能性をほぼ排除した。これに加えて今年のインフレ率が大幅に低下すれば、労働需給の緩和が賃上げ要求の後退を招き、ひいては物価の伸び鈍化につながる伝統的な経済理論が復権したように見えるかもしれない。
労働市場、インフレの道しるべにあらず
誰も認めたがらないが
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