失業率の上昇を祝うべき時はめったにない。だが今はその時だ。1日に発表された8月の米失業率が3.8%と1年半ぶりの水準に上昇したことは、労働市場が顕著に軟化したことを示す最近の兆候の一つだ。インフレ率を2%まで引き下げてその水準で維持するための米連邦準備制度理事会(FRB)の取り組みにとって、これは通るべき道だ。リセッション(景気後退)を確実に回避できるほどではないが、一助にはなる。なぜ労働市場がそれほど重要なのだろう。どのみちインフレ率は、労働市場が軟化せずともすでに低下している。つまるところ、答えは総合インフレと基調インフレの違いにある。総合インフレ率(物価上昇率)は2021年初めの2%未満から22年6月には9.1%まで上昇した。要因となったのは、サプライチェーン(供給網)の混乱、政府の現金給付とロックダウン(都市封鎖)でモノの購入が増えたこと、ロシアのウクライナ侵攻に伴う原油高だ。今年に入り、総合インフレ率は4%を下回った。要因は、原油価格と航空運賃の下落、家賃の伸び鈍化、健康保険料の引き下げだ。