朝ロの利害一致が
両国関係を強化

 しかし、今回の会談を巡る状況は一変している。

 ロシア軍は長引くウクライナとの戦争で消耗し、弾薬、砲弾が決定的に不足している。こうした中、ウクライナ戦争の遂行に必要な弾薬や砲弾を大量に提供できる国は北朝鮮を置いてほかにない。しかも北朝鮮の武器は、ロシア製の武器をもとに開発、製造されており、ロシア軍にとって直ちに実戦に投入できる便利なものである。

 金正恩氏は、7月27日の北朝鮮戦勝節(停戦記念日)70周年の祝賀のために訪問したジョイグ・ロシア国防相に自ら北朝鮮の最新武器を紹介した。その後、金正恩氏は、3回にわたり、大口径放射砲弾と戦略巡航ミサイル、無人攻撃機、戦術ミサイル、戦闘装甲車を生産する施設を視察する様子を公開し、北朝鮮メディアがこれを大々的に報道した。これらは、ロシアが直ちにウクライナ戦争に投入できる武器である。

 北朝鮮のこうした行動はロシアに北朝鮮の武器を売り込み、提供する用意があることを示すものである。北朝鮮の武器を売り込むことで、プーチン氏に恩を売るとともに、北朝鮮にとっても欠乏する外貨獲得の手段となる。

 他方、北朝鮮は、食料・エネルギー支援を望んでいる。そして、より重要なことは、先端軍事技術の支援を得ることである。最近2回失敗した偵察衛星、原子力潜水艦、核兵器、大陸間弾道ミサイルなど、北朝鮮が死活をかけて開発中の先端武器技術をロシアは保有している。

 今回の会談で、ロシアが何を北朝鮮に与えるのか。

 韓国の専門家は、「ロシアは過去に北朝鮮に核拡散防止条約(NPT)加盟を強要し、北朝鮮の核実験を『国連安保理違反』と批判したこともある。こうしたことから、ロシアが北朝鮮と核開発技術を共有するかは懐疑的であるが、ロシアは北朝鮮の砲弾と弾薬を受け取れば、その見返りとして食料とエネルギー、人工衛星および弾道ミサイル発射技術を提供する可能性が高い」と分析している。

支援する関係から
相互補完的な関係へ

 これまで朝ロ関係は、事実上「核の傘」を提供するレベルにとどまっており、ロシアが一方的に北朝鮮を軍事的に支援する関係にあった。しかし、現在はロシアの先端技術の供与と引き換えに、北朝鮮が弾薬や砲弾を提供するという相互補完的な関係になっている。

 今般プーチン氏が自ら、「あらゆる方面での双方の業務的連携」を強調したのは、朝ロ関係の変化の可能性を示唆した言葉と解釈される。

 慶南大のイム・ウルチュル極東問題研究所教授は「北朝鮮の貿易でロシアが占める比率は3%に過ぎないが、今回の会談をきっかけに、中国のほかロシアを新たな支援の窓口に追加しようとするだろう」「特に北朝鮮の武器支援を通じてウクライナ戦争が長期化する場合、(アジアにおいても)米中対立の中で浮上した台湾問題の将来についても北朝鮮の立場は強まり、朝鮮半島の将来を決める際の北朝鮮の対西側交渉力が予想外に拡大する可能性がある」と警戒している。