余談だが、上位ポジションで参画する方ほど、その組織の課題を正論で話し、失敗するパターンは多い。前職では、課題を指摘すれば、下のメンバーが取り組んでくれるケースが多かったのだろう。ただ、新しい組織でこれをやるとほぼ機能しない。経営に近いポジションであってもこの手の失敗は数え切れない。それほど、アンラーニングは難しいのだ。
どの組織だって、無限に課題はあるだろう。中間層が薄い。事業の解約が多い。キーになる人材が採れていない。どれも正しいのかもしれない。しかし、新しく入った人に求められているのはそれをあげつらうことではない。
わかっていながら解決できないから苦労しているのであって、「解決できない背景には何があるのか」、「背景構造まで理解したうえでどう解決するのか」まで踏み込まないことには、まったく意味がないのだ。
アンラーニングの方法論
過去の成功のすべてを否定する必要はない。重要なのは、一度立ち止まり、成功スタイルのうち、「ここで通用するもの」「ここでは通用しないもの」の仕分けをすることだ。
まず、細かいノウハウ以上に何より重要なのは、転職先の方針や思考、やり方、今起こっていることに耳を傾ける姿勢、いわば新しい組織にいる方に対する「敬意」だ。それなしには、何も始まらない。では、そのうえで、具体的にどうアンラーンしていくのか。
他者の重要性
アンラーニングは非常に難しい。自分にとって当たり前の「常識」となっていることに自分で気づくこと自体、構造的に難しさがある。だからこそ重要となるのが他者の存在だ。アンラーニングは、ぜひ上長や同僚、ナナメンター(※)なども含めて実施することをおすすめする。
・前職やこれまでのキャリアで培ってきたスキルやスタンスはどんなものだっただろうか
・前職やこれまでのキャリアで、評価される(あるいはされない)思考のタイプや価値観はどんなものだっただろうか。そのうち自身が特に影響を受けてきたものは何だっただろうか
・逆に、新しい組織で、求められるスキルやスタンスは何だろうか
・捨てるべきもの、維持するもの、高めていくべきものは何だろうか
こんな内容について対話する時間を、繰り返し設けられるとよいだろう。
※ナナメンター:上長、自部署のメンバー以外で業務外の話もできる相談相手。上下ではなく、斜めの関係にいる人。