新しい場所で必須の「アンラーニング」 カルチャー・バリューを「背景と文脈」から理解する

 カルチャーについて、少し深掘りしておきたい。転職後の「カルチャーのミスマッチ」は本当によく聞く。離職の主要因と言ってもいい。

 カルチャーとは、組織の内部で自然に培われ、組織や従業員間で当たり前の共通認識となった規則や価値観、つまり「空気感」のようなものだ。目に見えない分、どうしても入社前には100%は掴みづらく、入ってみたら意外とフィットしなかったということがよく起こる。

 前職での価値観をそのまま持ち込むと、以前は評価されたはずの行動でも、「考え方が何か違う」と、逆に周囲からは「ズレ」として捉えられてしまう。

 バリューを明文化している企業は、入社検討時によく見ておこう。そこに「社員にどんな行動を求めるか、何を大事にしているのか」が表れている。また、バリューを掲げるだけで浸透させられていない企業は、さらに問題が根深い。「バリューがお飾りになっていないか」を確かめるいちばんわかりやすいポイントは、複数の社員に聞いてみて、同じ趣旨のメッセージを答えられるかどうかだ。

 カルチャーを理解する際には、明文化された文章だけでなく、そのカルチャーが創り上げられた背景や文脈から理解することが重要だと言われる。創業者の想いや、立ち上げの経緯などだ。もし本人が在籍し、直接聞ける規模なのであれば、直接聞いてみるのがもっともよい。背景に込められた意味や歴史を知ることで、そのニュアンスを立体的に掴むことができる。

 直接創業者に聞くことができない場合は、その分記事や資料がまとまっていたり、語り部となる初期のメンバーがいたりするため、何かしら、文脈を理解するための方法はあるはずだ。

同じ言葉でも違う意味

 より具体的に言えば、カルチャーや、バリューの「言葉の意味合い」をきちんと理解することが重要だ。同じ言葉を使っていても、組織によってその意味合いは異なる。

 たとえば、「スピード」という言葉も、大きい組織では「定められた期限内に遂行する」を意味することもあれば、スタートアップでは、「『当日中』に、どれだけ粗くても何かしらのアクションを返す」を意味することもある。

 カルチャーの細かな意味合いは軽んじられがちだし、「わかった気になりやすい」のが盲点だ。明文化された文章だけでなく、何がこの会社では評価されるのか(されないのか)などの要素もふまえ複合的に理解し、解像度を高めてほしい。