営業職の方だ。前職では、どの業界でも使われる低単価の商材を、行動量の多さで売り捌さばいていくスタイルで成功してきた。足で稼ぐ自分のやり方に自信もあったし、実際に成果も出ていた。
しかし、営業スキル向上を目指して移った転職先は、扱っている商材が、顧客マーケットの小さい高額商材だった。だからこそ、クライアントとの1つひとつの接点を大事に提案を重ね、信頼関係を築きながらソリューション営業を進めるのが成功パターンだったのだが、この方は、過去の自分の成功体験を捨てきれず、ついつい行動量に走ってしまう。質より量で「勝ててきてしまった」ゆえの失敗だった。結果として、失注だけでなく、営業としての雑な対応にクレームが多発。退職を余儀なくされてしまった。
過去のスタイルのうち、何が通用し、何は通用しないのか。通用しない部分についてはいったん脇に置く「アンラーン」が必要だったが、それを怠ったのだった。
(3)マネジメントスタイルが異なるケース
最後に、マネジメントスタイルの違いによる失敗パターンも挙げておこう。マネジメントの役割は、企業によって異なる。
たとえば、前職では「マネジメント」の文字どおり、手を動かさずに管理することを求められていた方。自身が現場に入ることは逆に非効率で、役職に応じて職務を明確に分けるカルチャーの職場だった。
だが、リソースも少ない転職先では、まずプレイングマネジャーとして、自身がトップパフォーマーであることを求められた。成果を出していない以上、上長でいるべきではないというカルチャーだった。
だが、この方はマネジャーで入社して早々、自らの考える「マネジメント」で成果を出そうと、手を動かさず、既存メンバーの行動について口出しばかりしていた。メンバーからすると、リソースがただでさえ少ないのだから、口ではなく、まず手を動かして、引き取れる業務は引き取ってほしい。指示を出すにしても、まず自身が成果を出せることを示してからにしてほしいとの思いがあり、関係は急速に悪化してしまった。同じ「マネジャー」という役職であっても、求められるものの認識の乖離は大きい。
他にも、上意下達で、具体的な指示を出し、厳格な行動管理によって評価されてきた方が、メンバーとの対話の中で自発性やWillを引き出し、納得度高く働いてもらうマネジメントを求められる組織に入り、まったくワークしないケースも散見される。