一人ひとりの仕事を社内全員に伝えることの重要性

 そして、「働くひとの健康を世界中に創る」という、iCAREのパーパスや「楽しまなければプロじゃない」というクレドを社内に浸透させること――これまでも、パーパスやクレドは、CEO(山田洋太氏)が発信する「CEOレター」や半期に一度の「全社キックオフ」、週1回の全社定例会議、CxOと社員が語り合う「CxO Open Hour(シーエックスオー・オープンアワー)」など、さまざまな方法で伝えてきたものの、社員数が増えることによって、その難しさを感じるようになったという。この「CxO Open Hour」は、広報チームが人事部門に異動したことで、さらに有効的な内容に進化している。

「CxO Open Hour」とは、CxOが自らの言葉で思いを伝え、全社員の納得感やモチベーションの向上をもたらす場です。今春から、毎回のテーマを決めて「今回は女性社員対象」「今回は20代社員対象」など、参加者を絞ることにしました。そうすることで、参加者の心理的安全性が確保され、気後れせずに意見を言えるようにもなります。さらに、CxOが一方的に語るのではなく、多様な社員がそれぞれ感じていることに耳を傾ける場になるよう工夫しました。ファシリテーター役も各回で立候補者を募っています。自分と同じ立場の社員がファシリテーターを務めれば、「参加しようかな」という気持ちになりますから。すべての社員に当事者意識を大切にしてほしいと思っているので、より参加型になるための運営を目指しています。

「CxO Open Hour」の評判はとてもよく、社員の半数近くが参加してくれた回もありました。終了直後にフィードバックをもらいつつ、半期に一度、広報活動全般についてのアンケート調査を行っているのですが、そのなかには「立場の違う者がすぐに分かり合えなくても、より良い環境をつくっていきたいというトップの意思を感じ、会社に対してポジティブな感情を持つようになった」といった声などが届いています。CxO側も「たくさんの社員と語り合える場があって良かった」と言っています。

 呉さんは、「パーパスやクレドが社内に浸透している」とは、そもそも、どのような状態を指すのか?ということを再考した。約140名がリモートワークを続ける日常では、実際に浸透しているのかどうかを把握するのが難しいからだ。

呉  “浸透する”という状況は、「パーパスやクレドに則って行動する仲間の姿勢を、自分の仕事に生かしたり、自分の発信を通して仲間が変化したりするなど、社員どうしが影響を及ぼし合うこと」と定義しました。そこで、個々人が仕事に向き合う姿勢を伝える“カジュアルなメディア”があるとよいのではないかと思い、「アイケアニスト」という社内報ラジオを始めました。オンエアは月1、2回。社員へのインタビュー形式の番組です。Slackでのコミュニケーションや、感謝を伝え合う「GJ Carely」というアプリ内で飛び交う「ありがとう」の数も参考にして、広報チームが人選しています。Slackには、クライアントからの声を投稿する「社外からのありがとう」というチャンネルもあるので、その情報を参考にすることもあります。開始から半年たった時期に社員にアンケート調査したところ、「アイケアニスト」は10段階で8に相当する評価でした。「自分が取り上げられなくても、さまざまな人にスポットをあてるメディアの姿勢がモチベーションアップにつながる」という声がありました。一人ひとりの仕事を社内全員にきちんと伝えることの重要性を改めて感じています。