“広報チームを人事部門に組み込む”人事異動

 マーケティング部ブランディングチームの“一人目広報”としてiCAREに入社した呉さんの仕事は、主に社外向けのサービス広報(*2)だった。転職から丸2年、3人目の出産をはさみながら、社内におけるチーム賞や成果賞を手にして走り続けてきた呉さん――青天の霹靂は、今年(2023年)2月に、所属する広報チームが、People Experience部という人事部門に移ったことだった。採用担当2名、総務労務担当3名が在籍していた人事部門に広報メンバーが加わったのだ。この異動には、人的資本経営の時代に向き合う山田洋太代表取締役CEO(*3)の確固たる思いが込められていた。

*2 サービス広報は、自社商品・サービスの社会への認知度を上げ、クライアントの購買につなげることを目的とした広報のこと
*3 山田洋太代表取締役CEOの「HRオンライン」インタビュー→「健康経営」の落とし穴は?企業が忘れてはいけない3つのポイント(2021年10月13日配信)
 

 山田の考えは、“昨今、社内外に対して情報をどのように届けていくのかがいっそう重視されている。人的資本の時代に、これからの人事部門は社内だけでなく、社外に対してもさまざまな情報を開示することが求められ、その情報をどんなふうに咀嚼し、伝えるかが重要になる。そこで、コミュニケーションのプロである広報メンバーが人事部門に入り、あらゆる情報を戦略的に社内外に流通させることが強みになる”というものでした。それを聞いて、私は今回の異動の価値を理解しました。

 People Experience部への異動で、呉さんの仕事は8:2の割合で社外広報よりも社内広報に重きが置かれるようになった。その内容は、2つに大別される。(1)社内コミュニケーションの活性化、(2)パーパスやクレド・バリューの浸透――この2つの目的達成のために、“社員一人ひとりにスポットをあて、成功や挑戦の裏側のストーリーを伝えること”“健康をキーワードにコミュニケーションを促進すること”などの施策があるという。

 異動前は、サービス広報につながる情報を収集し、ニュースリリースなどにまとめ、社外に発信することが仕事のメインでした。現在は、社内のあらゆる情報を集め、内容と目的に応じて、社内・社外に向けて発信しています。社外への発信内容も、より「ブランド」を意識した発信になっています。