たかがゴミ収集日と侮るなかれ。実は、ゴミ出しにはスケジュール管理のみならず、ゴミをまとめる、分別する、ゴミを運ぶなど、年老いた親にとっては高度な要素がたくさん詰まっている。そのため、ゴミ収集日と片付けるスケジュールが合っていないと、子どもが帰った後に大量のゴミ袋が残ってしまい、親にとっては大きな負担になってしまう。
中には部屋に積み重なったゴミ袋を見ているうちに、袋を開けて、せっかく捨てたはずのものを部屋に戻してしまう親もいる。
「実は、実家に物が増えていく原因の一つに、親がゴミを捨てるのが面倒になってくるというものがあります。その結果、ゴミが家の中にたまってしまう例もたくさん見てきました。片付けの段取りを考える上でもゴミ収集日は重要で、特に大きなものを片付ける日は、人の確保も必要ですし、身内に頼めないようなら業者の手配も必要になってきます。そのため、ゴミ収集日は、動く前に必ず確認するようにしてください」(同)
片付けを最速・最短・最効率的にする
3つのコツ
さて、ここまで準備をした上で、ようやく片付けの実践だ。それぞれのエリアごとに片付けを始める前に心がけてほしいのが、次の3点。渡部さんが「片付けを最速・最短・最効率的にするために絶対に欠かせない3点」と呼ぶ法則だ。
(1)使うものだけを目に見える場所に
(2)使わないものは捨てる
(3)一時保管箱を活用する
まず一つ目が、「使うものだけを目に見える場所に」。基本的に、見える場所にしまうのは、日常的に使うもの“だけ”。注意しなければならないのが、「使える」と「使う」は全く違うということ。目に見える場所に出して良いのは、日常の中で実際に使っているものだけに厳選する。
次に、「使わないものは捨てる」。壊れたものや汚れたもの、使えないものは迷わず捨てること。高齢になるほど、日常の中で使うもの・使わないものはハッキリしている。「いつか使うかも」と取っておいたものでも、長期間使っていないままの状態が続いているなら、思い切って捨てよう。空いたスペースを有効活用できるし、普段使うものだけの状態のほうが、掃除も片付けもしやすく、何より安全に暮らせる。
三つ目が「一時保管箱を活用する」こと。一時保管箱とは、捨てるか捨てないかを迷ったときに入れる「一時的に保管しておく箱」のこと。箱は、プラスチックの衣装ケースでも、段ボールでも、ゴミ袋でもOK。ただし必ず見える場所に「一時保管箱」と、「半年後の日付」をセットで書いておくとわかりやすい。
この一時保管箱の存在は重要で、誰しもが持つ“捨てることへの罪悪感”をなくしてくれる役割がある。捨てる・捨てないをその場で判断するのではなく、“とりあえず一時的に保管しておく”という安心感があるため、片付けも進みやすい。一時保管箱は、半年ぐらい開けることがなければ、“使わないもの”として認定すること。もし一度も開けることがなければ、そのまま開けずに処分しよう。
「片付けで一番時間がかかるのは、捨てるか捨てないか、迷うものの判断です。特に物を捨てたがらない親世代は、無意識のうちに“捨てなくていい理由”を頭の中で探しがち。片付けには体力がいりますが、それ以上にこうして頭を使うので、疲れるのです。そんな中で、この一時保管箱という“逃げ道”があれば、迷う時間を短縮できる上に、疲れも最小限に抑えることができます」(同)