以上が、私が新規事業のプロとして、事業を成長に導く正しい姿勢や進め方など、基本の型を身につけるまでの軌跡である。
文中、私の新規事業の師匠であり、育ての親ともいえるミスミ創業者・田口弘さんとのエピソードや、田口さんから得た教訓をかなりの分量をさいて記してあるのは、私自身が新規事業において大事だと思っていることはすべて、田口さんから学んだからだ。
とくに、事業開発の仕組みを教えることはできても、世の中に対する課題感や熱量だけは、誰かが管理したり押し付けたりすることはできない。「新規事業は意志が10割」なのに、だ。
守屋 実 著
新規事業は、どんなに量稽古をしていても百発百中とはならないものだ。その過程での苦しみはかなり強いもので、これを乗りきるには、自分の中から湧き上がってくる「事業をやりきる覚悟」と、「その領域の課題を本気で解決したい意志と熱量」が重要になる。
私があっちにぶつかり、こっちにぶつかりと、もがきながらも新規事業を生み出し続けてこられたのも、大きな志と熱意や挑戦心をもちながら、生産財の流通革命を成し遂げた田口さんに感化されながら、環境を与えてもらい、量稽古を積み続けられたことが大きい。
読者諸氏が「絶対に新規事業を成功させるのだ」という強い決意のもとに、自社の社員に対して、“私にとっての田口さん”のように、新規事業に邁進(まいしん)できる環境や姿勢を提供してやれることが、事業成功の大きな肝となることを心に留めてほしいと思う。