ちょうどそのときに、社内の勉強会でミスミの事業モデルについて学んだ。ミスミでいう持たざる経営、時の言葉でいうとシェアリングエコノミーだ。もしかしたら、印刷業界にミスミのビジネスモデルを適用すると、新たな道が拓けるかもしれない。集めてきた印刷の注文を印刷工場の未稼働の所に最適に分配する、印刷のプラットフォームビジネスである。
こうした構想を経て、松本さんは、「この事業を実現させるためには、ミスミモデルに詳しい人が必要だ!」ということで、伝手(つて)をたどりながらミスミ出身者を探し、たまたま私に繋がった、という縁である。
一方、私のほうでも、ミスミモデルを使った新規事業をさまざまな産業に応用することは考えていたので、松本さんが語る事業構想に、すぐさま反応することができた。そもそも、かつてミスミで新規事業を検討していたときに、印刷業界は候補のひとつに挙がっていた。しかし、当時はまだインターネットがない時代で、自分たちでは答えが思いつかず、参入に至らなかったのである。
だから、松本さんと出会い、大まかな構想を教えてもらった瞬間に「参画したい!」と直感し、みずから資金を入れて創業期の一員として入れてもらったというのが、ラクスル参画の経緯である。
こうした経緯で参画させてもらったラクスルは、2009年の創業から9年経った2018年5月にマザーズ(現グロース)上場、その翌年には東証一部(現プライム)に市場を変更、累計のユーザー数は200万ユーザーを超えている。初期のラクスルでは、ミスミとエムアウトで量稽古して身につけた「型」が大変役に立った。
さらにラクスルが上場した同じ年の4月、取締役として参画していた、介護業界に特化したマッチングプラットフォームを展開している「ブティックス」もマザーズ(現グロース市場)に上場を果たし、その実績をみた企業から、「2カ月連続上場を果たしたその知見を生かして、新規事業の助っ人になってほしい」とオファーをいただくようになり、現在に至るというわけだ。