システム開発と「美術品制作」の
意外な共通点とは

 そして、ここからは私見になるが、現代のシステム開発は「アート(美術品)制作」と共通点が多いのではないだろうか。

 本書には「エンジニアは完成したプログラムに美しさを求める」「(開発は)始めてみないとかかる時間が読めない」といった記述があるが、これらはまさしくアート制作にも当てはまる。

 ルネサンス期の巨匠、ミケランジェロやラファエロなどは工房で弟子らとともに作品制作を行っていたというが、おそらく、そこでは「納期に間に合わせるために無理やり人を増やす」などということはなかっただろう。

 巨匠を中心に、共通の目的を持って信頼感で結ばれたチームだったはずだ。そうでなければ、あれほどの時代を超えた名作の数々が生まれたはずがない。

 芸術といえば、折しもビジネスの世界では、既成・固定概念にとらわれない「アート思考」が注目される時代になった。本書を読んで「人さえ増やせば仕事は進む」という固定概念から脱却し、芸術界の巨匠のように「少数精鋭」で成果を出すチーム作りについて考えてみてはいかがだろうか。

(情報工場チーフ・エディター 吉川清史)

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