大阪を代表する電機メーカーだったパナソニック ホールディングスとシャープ。両社共に“大阪離れ”が進み、大阪の「顔」としての地位は低下している。ところが、地元では凋落を嘆く声があまり聞こえてこない。特集『「大阪」沈む経済 試練の財界』(全23回)の#17では、地元での存在感が薄れつつあるパナソニックとシャープの現状を追った。(ダイヤモンド編集部副編集長 大矢博之)
中核会社パナソニック本社が東京移転でも
「残念がる声はほとんど聞かない」
「パナソニックの本社が東京に移転しても、もはや残念がる声はほとんど聞きませんね」
大手信用調査会社の関西エリアの担当者はこう嘆息する。
パナソニック ホールディングス(HD)は4月1日、持ち株会社体制に移行した。持ち株会社の本社は大阪府門真市に残したものの、中核となる事業会社パナソニックの本社は東京・汐留に移転となった。
「2000年代初めは関西経済を引っ張るリーディングカンパニーが必要だと考え、シャープの液晶ディスプレー、パナソニックのプラズマディスプレー、三洋電機のリチウムイオン電池が頑張っていた」
ある関西財界の大物経営者はこう振り返る。しかし、リーマンショックを契機に進んだ円高などの影響で各社の業績は悪化し、三洋電機はパナソニックの子会社に。パナソニックとシャープも巨額の赤字を計上し、工場など国内拠点のリストラを推し進めた。
大阪の「顔」と目されていた電機産業の凋落を目の当たりにした地元の経済界は、インバウンド需要を取り込むことへとシフトしていった。
次ページでは、関西財界の不評を買った津賀一宏・パナソニック ホールディングス会長の発言や、“大阪離れ”が進み存在感が薄れつつあるパナソニックとシャープの実態をお届けする。