トヨタ自動車とパナソニックは約70年に及ぶ蜜月関係を築いてきたはずだった。だが2017年に車載電池で両社が提携した頃には、その関係は崩壊寸前にあった。特集『絶頂トヨタの死角』の#13では、華々しい提携会見の裏では何が起きていたのか。その内幕を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
世紀の日本電池連合が結成されたが
「対等」の精神からはほど遠い
「両社には、松下幸之助翁、豊田佐吉、豊田喜一郎という日本の国の発展に人生を捧げた偉大なる発明家、起業家から継承してきたベンチャー精神があります」
2017年12月、トヨタ自動車の豊田章男社長とパナソニックの津賀一宏社長(当時。現会長)は記者会見の壇上で、笑顔を浮かべながら固い握手を交わした。世界的なEV(電気自動車)シフトを見越して、EVに搭載する車載電池で“日本連合”を組んだのだ。
豊田社長は、両社の創業者まで持ち出して提携の意義を強調した。だが、この1年後に明らかになった提携の中身は、事実上、トヨタがパナソニックのリチウム電池事業の大部分を吸収するというもの。両社が強調していた「対等」の精神からはあまりにもかけ離れていた。
70年の長きにわたって蜜月関係を築いてきたトヨタとパナソニック。それでも、自動車領域においては、サプライヤーピラミッドの頂点に君臨するトヨタと“下請け”のパナソニックは厳格な主従関係にあった。
実はこの提携に至ったときには、両社が主従関係を維持することすら難しいくらい関係は冷え切っていた。
次ページでは、華々しい提携の裏で何が起きていたのか、その内幕を明らかにする。さらに、両者の蜜月関係が崩れるに至ったのはなぜなのか。「愛憎の70年史」を振り返りながら解説していく。