1on1によってメンバーの強みを生かし、
価値創造につなげる

 HRエージェントDivision首都圏統括部は、マネジャーの下にチーフやリーダーがいて、メンバーと1on1を直接行っている場合がある。チーフやリーダーは、売り上げ目標を持つ一方で、メンバーの育成サポートも担う。

 矢藤良介リーダーもメンバーの持ち味を生かして、メンバーの新しい業務を生み出すことに成功した。その業務とは、事務職の仕事図鑑の制作である。

 きっかけは1on1でのメンバーの話だった。彼女の強みは情報の可視化だと矢藤さんは感じていたが、本人がどうしても強みを自覚化できていなかったという。そんな中で「自分でゼロからつくってみたい」という想いを1on1で引き出し、任せることにした。

「彼女の思いと、仕事を可視化して仕事のマッチング率を高めるという業務に接点がないか、いろいろ考えました」(矢藤さん)

 もちろん、当初から順調だったわけではない。

「彼女は(仕事に)主体的に取り組もうとしているのですが、図鑑制作は初めてのことで目指すものが大きすぎてしまい、途中で失敗するのではないか、と強く不安を抱いているのがひしひしと伝わってきました」(矢藤さん)

 そこで、矢藤さんは週1回の定例1on1の場を最大限に活用した。

「彼女のやりたいという思いが原体験に根ざしており、想いが強いと感じていたので絶対にできると信じていました。もしできなかったとしても、彼女の成長のためになり、よい経験になる。そのため、1on1では『絶対できる』と期待をかけ続けていました」(矢藤さん)

 もう一つ、気をつけた点がある。後方支援に徹したことだ。「○○についてはどうしたらいいでしょう」と聞かれても、あえて答えを言わないようにしてきました。『もうどうしていいのかわからない』という言葉が出るまでは、頑張れると思いました。信じて任せました」(矢藤さん)

 では、矢藤さんは、答えを言わずにどのように後方支援を行ったのだろうか。上司の坂下未紗マネジャーの戦略を踏襲し、情報収集の手伝いに徹した。「それなら○○さんに聞いてみたら」「こういう勉強会もあるよ」「詳しい人を紹介しようか」といった具合だ。

「(マネジャーの)坂下にも相談しながら、メンバーへの関わり方や踏み込み方を調整していったのです」(矢藤さん)

 ところで、矢藤さんは自治体職員からの転職組だ。

「売り上げをバリバリ上げたいと思って転職しました。頂点をとるのも面白かったのですが、周りの人の成長を実感できるのも幸せだと感じました。いまでは自分が表彰されたときよりもメンバーが評価されたときのほうがうれしいです。スイッチが変わりましたね」(矢藤さん)

 1on1はメンバーのみならず、リーダーやチーフのやりがいにもつながっている。