突然の人事異動で意思決定が求められる
マネジャーとして工夫したこととは?

 矢藤さんを育てたマネジャーは、どのようにして1on1を行ってきたのか。

「私自身は、当時のマネジャーに機会と持ち味をつなげていただいたと実感していました。だから、自分もそれを大事にしたい。だから、チーフやリーダーには、まずメンバーがなにを大事にしているのかをつかむようにと伝えてきました」――こう話すのは坂下未紗さんだ。

 坂下さんは、実は、マネジャー昇格と同時に、人事異動を経験したという。マネジャーにはなったばかりのうえ、業務そのものにも慣れていなかった。

「自分は経験から学ぶタイプなので、まさにアウェイに来たという感じでした。経験がないがゆえに、自信をもって意思決定ができなかったのです」(坂下さん)

 転機となったのは、当時の上長との1on1だった。

「自分が何を大事にしているのかを聞いてくれ、なぜそう思ったのか、なぜそれをやりたいと思ったのかという部分を引き出してくれました。メンバー時代は、『1on1は上長が話したいことを聞いてくるんでしょ?』と斜に構えていたのです。自分もこんなに変われるのだと実感しました。それで、自分自身もメンバーに対して、よい影響や機会を与えるようにしたいと思いました」(坂下さん)

 坂下さんは、チーフやリーダーには、自身の目標や状況を説明したうえで、メンバーへの1on1はチーフにも任せるようにした。「メンバーの持ち味は、自分よりも長くメンバーに接しているチーフにつかんでもらい、機会展開シナリオも考えてもらったうえで、いっしょに業務を割り振っていきました。自分が上司にしてもらっていたように、この人とこの人をつなげるといいのではないかと、いろいろ紹介し、情報のシャワーのなかからしっくりするものをメンバーに選んでもらうようにしました」(坂下さん)

 前述の仕事図鑑についていえば、リーダーである矢藤さんとじっくり話し合い、メンバーにアサインしたという。仕事図鑑づくりが22年度の「グッドチャレンジ賞」に選ばれ、喜びもひとしおだったにちがいない。