迷うことができる幸せを
じっくり味わう

 そうした心の声が聞こえてくるようになると、日常の歩みを止めて自分自身と向き合わざるを得ない。定年退職を機に第二の人生に踏み出すか、まずは定年延長や再雇用で65歳~70歳くらいまで今のまま働き続け、それから第二の人生に踏み出すか。しかし健康寿命から考えて、そんな後から第二の人生に踏み出す気力があるだろうか……など、いくら考えても、なかなか答えは出ない。それは多くの人が経験しているはずだ。

 それでも、悲観することはない。どうすべきか迷い悩むというのは選択肢があるからであって、それは贅沢な迷いであり、悩みでもある。さらに言えば、それはより良い方向に生活を構築していきたいという思いの現れであり、向上心に裏打ちされたものと言える。迷い悩むというのは、ただ受け身に流されて生きているのでなく、主体的に生きようとしている証といってよいだろう。

 第二の人生をどうするかで迷い悩むときには、いろんな思いが頭の中を駆けめぐる。やり残したことはないだろうか。何か気になっていることはないだろうか。自分はどんな人生を生きたかったのだろうか。この人生により豊かな意味をもたせるにはどうしたらいいのだろうか……迷い悩むのは苦しいかもしれないが、自分らしい、納得のいく人生にしていくための、いわば生みの苦しみと思えば、少しは気も楽になるのではないか。だから、焦らずじっくり迷い、悩めばいい。