今も語り継がれる
難航を極めた工事
しかし、限られた用地の中、営業中の路線に駅を新設する工事、JR東海の言葉でいえば「今でも(社内)技術陣の中で語り継がれる工事」は難航を極めた。
東海旅客鉄道20年史より 拡大画像表示
品川駅の北側には大井車両基地に分岐する橋梁、南側には八ツ山トンネルがあり、品川再開発計画との整合や線路配置上の制約から、高架だった線路を地上に降ろさなければならない。限られたスペースの中で列車運行に影響を及ぼさないよう進められた工事には6年半を要し、ようやく2003年に完成したのである。
その他にも、列車の運行本数増を見越した電力設備の増強。車庫の収容本数の増加。折返し時間短縮のための信号設備や分岐器(ポイント)の改良、車内清掃体制の見直し。高速化に対応した線路改修、騒音対策の強化など、あらゆる面で改良を重ね、「のぞみ」中心ダイヤを完成させた。
だが、東海道新幹線を日常的に利用している人は、朝6時の初発を除いて品川始発の列車など設定されていないではないかと疑問に思うだろう。営業列車11本が限度だった故に品川駅が必要とされたはずが、2003年開業時に品川折返し列車は設定されず、東京駅折返し列車が12本設定されていた。
結論から言えば、設備改修により東京駅の折返し能力が向上した結果、品川駅の折返し設備を使わずとも、必要な本数を運行できるようになったからだ。以降、「のぞみ」の1時間当たりの最大運行本数は2005年に8本、2009年に9本、2014本に10本となり、2020年のダイヤ改正ではついに平均3分間隔、「のぞみ」12本、「ひかり」2本、「こだま」3本、回送列車3本の計20本を折返しするに至った(参考『「のぞみ」本数2割増は本当に難題だった!ダイヤ担当者に聞く舞台裏』)。
では品川駅は無駄だったのかというと、物事はそう単純な話ではない。