イスラエルはハマスへ
熾烈な報復をするだろう

 イスラエルという国には三つの特殊性があります。一つは世界の多くの国から孤立していること。特に周辺の中東諸国との間の関係は建国以来ずっと冷えたままです。二つ目は、常に戦争による国家消滅の危機にあるということです。これまで何度も中東戦争を経験してきたイスラエル国民は、戦争に負けたら国がなくなると信じて戦っています。そして三つ目に、宗教的な信条が国際法よりも上位に来るということです。

 この三つの特殊性を前提にこの先起きることを考えると、事の重大性がわかってきます。

 イスラエルは今回の戦争でハマスを殲滅(せんめつ)しようとするでしょう。ウクライナ侵攻との違いを挙げると、その殲滅は本当にこの世界からハマスがなくなるまで徹底されるという点です。そしてここが重大な点なのですが、その戦争の過程でガザ地区が消滅する可能性までを考慮しなければならないという点が特殊なのです。

 今回の戦争の発端で、ハマスは国際的人道に反する犯罪的な行為を行いました。無抵抗な市民や外国人観光客を虐殺し拉致したことです。そのことだけでもハマスは国際社会から罰せられるべき存在ですが、問題はイスラエル軍からの報復もそれと同じか、さらに熾烈(しれつ)なレベルになるだろうということです。

 イスラエル政府は、人質を気にしないで侵攻するのではないでしょうか。そして結果としてガザ地区の民間人が巻き込まれることになっても、イスラエル政府は謝罪しないでしょう。ここまでが私が想定する普通のシナリオです。