もしも核戦争が始まれば
日本の経済危機は避けられない

 そしてここが経済予測の専門家としての領域なのですが、その場合に世界経済は激しく混乱するでしょう。日本はアメリカを選ぶか中東を選ぶか踏み絵を踏まされ、結果として石油や天然ガスが断たれる危険性に直面します。そうなれば第3次オイルショックの到来です。

 私はオイルショックを経験した世代ですが、あの当時のなんともいえない日本社会の空気は嫌なものでした。まだ海外旅行など夢のような時代に、遠く離れた国同士の戦争がきっかけで、なぜ急に狂乱物価が起きたのか、子ども心に暗い思い出として疑問が刻まれました。

 大人になってなぜ狂乱物価が起きたのかはわかっています。ですから、並の事態では以前のようなオイルショックは起きないこともわかっているのですが、ここで問題にしたいのは本当に“並の事態”だけで済むのかどうかです。

 過去の経済危機は、すべて市場が警戒していなかったところから起きています。リーマンショックしかり、コロナショックしかりです。過去起きたのと同じタイプの経済危機は、関係者が備えていることから起きないことが多いものです。

 一方で、誰も警戒していないことは、いざ起きるとそのインパクトは大きいわけです。その最たるものが、核戦争が始まるという事態です。

 不幸中の幸いと申しましょうか、ここまでの事態の推移の情報を集めると、そこまで最悪の事態になる可能性は高くないように私は捉えています。しかしこの問題は、ロシアのウクライナ侵攻以上に世界経済にとって重大な出来事だということは、引き続き認識し警戒しておいたほうがいいでしょう。世界平和はさらに遠くなったようです。