戦争が長期化すると最悪の場合
核攻撃の可能性も

 問題はそのシナリオ前提が悪い方向に崩れたときです。一つはハマスが善戦した場合です。イスラエル軍の想定以上に他国からの武器支援があり、双方に多くの犠牲者が生まれて戦闘が長期化したときが一番危ないのです。

 もう一つの前提の崩れ方として、イスラエルの戦費負担など経済面の事情がきっかけになる可能性もあります。すでにイスラエルでは通貨、株、債券のトリプル安が起きていて、今後拡大する戦線によって、さらに経済が疲弊する危険性が取りざたされています。

 経済が疲弊すれば、たとえ長い戦いの末にハマスを掃討しても、別の他国から攻め込まれる可能性も出てきます。イスラエル政府は徹底的にやると宣言しながら、同時に短期で終わらせようと決断する危険性は否定できません。

 その場合、イスラエルはハマスを殲滅するために核攻撃に移る可能性があります。いいとか悪いとかではないのです。未来予測の専門家としては、その可能性があることを考慮しなければいけないという話をしています。

 イスラエルは公然の秘密として核兵器を保有しています。その核を撃ち込むミサイルはわざわざ『エリコ』と命名されています。旧約聖書をご存じの方なら、その暗示する意味が理解できると思います。ガザ地区は海岸線からコンクリート壁までわずか3~5kmの幅しかない逃げ場のない細長い地区です。そこにエリコで戦術核を撃ち込まれたら、ハマスは壊滅するでしょう。市民とともに。

 普通に考えれば、国家がそのような国際社会から孤立するような意思決定をするはずがありません。しかし、「普通」ではないおそらく唯一の例外がイスラエルです。世界から孤立して成立した国家で、たとえ中東諸国から報復されても戦い切る自信がある国家です。日欧中露は激しく非難するでしょうけれども、アメリカは最後までイスラエルを支援することも知っている国です。