旧ジャニーズと旧統一教会のメディアへの反論は「成功」

 デジタルタトゥーという言葉があるように一度、ネットやSNSで流れた「悪評」はたとえそれがデマだとしてもなかなか消えることはない。しかも、デマを流した側のメディアやジャーナリストは「飛ばし記事」を訂正して名誉回復に努めるなんてことはほとんどない。つまり、デマのデジタルタトゥー化を防ぐためには、社会から叩かれながらも「事実無根な話は事実無根」としっかりと言っておかなければいけない。

 それをやっておけば、少しずつではあるが名誉挽回できる。わかりやすいのが「日本端子」問題だ。

 21年の自民党総裁選時、一部のジャーナリストやメディアが、自民党の河野太郎氏(現・デジタル大臣)のある「疑惑」を報じた。

 日本端子は、河野太郎デジタル大臣の一族が経営する自動車部品会社で、この会社が中国で合弁会社を作っていた。その合弁会社が自己資本比率の高さなどで、中国共産党から「破格の待遇」を受けており、太陽光ビジネスの利権に関わっているというのだ。つまり、このファミリー企業を通じて、河野氏が中国とズブズブだという疑惑だった。

 この報道を見て筆者は正直、「うわっ、自民党総裁選の前だからって飛ばしてるな」と思った。中国で経済活動をしている企業や、自動車業界を少しでも取材したことがある人ならばすぐにわかる「デマ」だからだ(『橋下徹氏「上海電力疑惑」にモヤモヤ、河野太郎氏の親中疑惑騒動と瓜二つ』参照)。

 騒動後、すぐに筆者はネットメディアでこの「疑惑」はデマですよ、という記事を書いたが、残念ながらライター風情が騒いだところで影響はない。ネットやSNSでは「なぜマスコミは日本端子問題を追及しない!また闇の力が動いているのか」とか陰謀論まで盛り上がる始末だった。

 しかし、ほどなくしてこの「疑惑」は収束していく。日本端子自身が当時ホームページで「反論」を掲載したのだ。もちろん、今もSNSを見ると、「河野太郎の日本端子問題を追及せよ」なんて騒いでいる人もいるので、また河野氏が自民党総裁選に出馬したりすると「復活」するのだろうが、「中国の手先」なんて誹謗中傷はかなり少なくなった。

 ここで大事なポイントは、「疑惑」をあおっていた側は一切そういう「被害回復」はやってくれないということだ。あれほど騒いでいていたジャーナリストやメディアは日本端子の反論をスルーしているし、今日にいたるまで「すいません。勘違いだったみたいです」みたいな釈明もない。

 批判をしているわけではなく、ジャーナリストやメディアとはそういうものなのだ。不正を徹底的に追及して闇をあぶりだそうなんて人は「自分が絶対に正しい」という強烈な信念がないとやってられない。ちょっと間違っていたからと訂正や謝罪をするような性格では、正義のジャーナリストは務まらないのだ。

 しかも、ジャーナリストが叩くべき「悪の組織」から間違いを指摘されて、発言を修正するなんてことがあったら「信用」が大きく傷つく。支持者も離れてしまう。マスコミが訂正や謝罪を嫌がるのはそこだ。「正義」は間違ってはいけないのだ。

 そんなジャーナリストの「気質」がよくわかる出来事が最近もあった。