不祥事に乗じた「デマ」は盛り上がるから黙認?

 例えば、ある会社で長年続けられてきた「不正行為」が明らかになったとしよう。言い逃れできない証拠・証言もある。社内調査でも認められたということで、経営陣が謝罪会見を催して不正の事実を発表した。

 当然、これで終わりとはならず、マスコミがさまざまな報道をするようになる。会社側が把握していない「元社員」などがメディアに続々と登場して「社長が知らないわけがない」「社内ではタブーだった」とかなんとか証言して、ネットやSNSで拡散されて「大炎上」というのがいつものパターンだ。

 しかし、そんな騒動に乗じて「デマ」が流れることがある。このケースならば、「社長が嫌がる社員に不正をするように命令をしていた」とか、「不正をしたら上司からほめられて社内で表彰された」なんて、実際にその会社にいる社員からすれば「さすがにありえないでしょ」「本当にうちの取材している?」と首を傾げるような“盛った話”が、メディアや著名ジャーナリストの口からバンバン飛び出すのだ。

「正義のメディアがそんなことをするわけがないだろ」と怒る人もいるだろうが、メディアで働く人の間では、わりとよく聞く話で「飛ばし記事(事実か疑わしい記事)」という言葉もあるくらいだ。筆者も記者をやっていた25年以上前から、大きな事件の現場で「うわ、すげえ飛ばしてんな」という報道に幾度となくお目にかかった。しかし、多くの同業者はそれを問題視することはなく「黙認」していた。

 不祥事企業、凶悪事件の犯人、不倫をした芸能人、悪徳政治家など、社会全体で石打ちの刑に処していい「悪人」の場合、「悪人らしい情報」があって叩ける方が、読者や視聴者の「勧善懲悪」欲求が満たされる。

 その方が部数も上がるし、ワイドショーの視聴率も上がる。「飛ばし記事」は「悪人」とその家族にとっては理不尽極まりない報道被害だが、それ以外の大多数にとって「みんながハッピーになるエンタメ」という現実があるのだ。

 では、このように「悪」のあるところに必ず生まれる、「正義」の人々が流す「適当なデマ」に企業や団体はどう対処すべきか。