「はは、さすがに悪徳商人、この手のことについて心得があるんだな。離婚してほしいなら400万元(約8000万円)出すんだね」
「俺をゆするなら、おまえ命を惜しんだ方が良いぞ」
「そんなのはもう考えのうちだ。あんたとのこと、証拠のすべてをファイリングして友人に渡した。やれるもんならどうぞ」
一回目の談判は結果無しに終わった。
周と愛人の企みに気づいた王はどうするのか?
数日後、王は、呼び出されて文々の待つ高級レストランの個室に赴いた。
お茶を啜ろうとしたときに、対面の文々はむっくと立ち上がったと思いきや、自分の真ん前に出てきて跪(ひざまず)いた。
「王さん、これ以上もう周を脅さないで。お願いだから。あたしが弱い立場にいるってこと、あなたもご存知でしょ。あたしが男の子を生んでから捨てようと、彼は最初から企んでいたんです。だから王さんにゆすられているから、いっそのことおまえは彼の女になればいいって言われたんです。王さんは正義感の強い善い人だってことはわかっています。だからお願い、あたしを助けるつもりで、離婚してください……」と泣きながら、頼んできた。
「苦肉の策を使いやがって」
すぐ相手の企みを見破った王は、内心ますます周を軽蔑し、やつから必ず大金を脅し取る決心を固めた。
「捨てられるって? ならちょうどいい。僕と一緒になれよ。僕には彼女がいないし、子どもも好きだし」
「そんな無理おっしゃらないで。あなたには手術したばかりのお父さんがいるでしょ? 周に捨てられたら私は今のマンションを追い出されて、赤ちゃんを連れてどう生きればいいの?」
「うちに引っ越して、赤ちゃんと一緒にオヤジの面倒も見てくれれば、僕は金を稼いでくるよ」
「だけど、あたし、あなたを愛していませんよ。あなたも、あたしを愛してはいないでしょ。息子だってあなたと何の関係もないし……」
「気にしないさ。愛情ってもんは一緒に暮らせば芽生えてくるもの。だってきみはこんなに美人だもん」
言いながら、王は文々に近寄り、その涙で濡れた頬を抓(つね)ろうとでもするかのように手を伸ばした。